地理学

自然環境を持続可能な観光資源に~新しい観光「自然ツーリズム」研究


沼田真也 先生

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科/都市環境科学研究科 観光科学域

どんなことを研究していますか?

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世界自然遺産登録を目指す奄美大島での野外実習

21世紀型の観光として、「自然ツーリズム」と呼ばれる新しいタイプの旅行・リクリエーションのあり方が注目されています。それはこれまでの見て歩くだけの観光ではなく、地域の人や自然とのふれあいなど体験的要素を取り入れるなどして、自然環境やその保護の重要性を理解してもらうことを狙ったものです。私の研究室では、世界遺産や国立公園など豊かな自然や都市公園などの身近な自然におけるツーリズムに目を向け、自然環境を持続的に利用・管理するための方法論を研究しています。

東南アジアから国内の身近な島々まで、様々な自然環境の特徴を理解し、活用する

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東南アジアや日本で研究を行っており、東南アジアの国立公園では野生生物観光を行うために、野生生物の生態調査やビデオカメラトラップを用いた観光プログラムの開発を行っています。また、屋久島、知床、白神、小笠原などの世界自然遺産地域では、生態学、地理学、社会学などの学術調査が多く行われています。このような学術研究活動と観光を結びつける「リサーチツーリズム」を提唱し、その可能性を探るための調査も行っています。

一方、自然を訪れる観光客の多くは都市に住んでいます。私たちの自然体験をよりよいものにするために、身近な自然との関わりや生物に対する好みや態度を理解することが重要と考え、身近な自然や人も研究対象とした研究も行っています。

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アジアゾウが集まる木にビデオカメラトラップを設置しています

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→公務員、学校教育、学術・研究開発、技術サービス
  • ●主な職種は→大学教員、公務員、環境コンサルタント
  • ●業務の特徴は→研究開発、国立公園管理、調査、コンサルティング
分野はどう活かされる?

環境省レンジャー、環境コンサルタント、空間情報事業などで、学んだことが特に活かされています。

先生から、ひとこと

大学は無知を知り、未知を探る場です。観光にかかわる様々な現象をテーマに、複数の視点から物事の本質を見極め、賢明な対応していくための方法論を身につけて欲しいと考えています。

先生の学部・学科はどんなとこ

観光科学科は学際的な学科です。理工学、社会科学を含む多様な分野の教員が異なる視点から観光にかかわっています。観光にかかわる様々な現象を科学的に理解し、適正に活用するために必要となる知識や方法を学ぶための教育活動を行っています。

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カヌー・カヤックはマングローブ生態系を満喫できる観光アクティビティの一つです

先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】
・国立公園の自然はきちんと守られているのか。
・国立公園にはどのくらいの観光客を受け入れることができるのか。
・世界遺産地域を訪問する観光客は何に満足するのか。
・子供の頃の自然体験は、旅行やアウトドアレクリエーションの好みにどのような影響を与えるのか。

興味がわいたら~先生おすすめ本

自然ツーリズム学

菊地俊夫、有馬貴之:編著

ツーリズムに関する多くの教科書は経営学の視点から執筆されたものだが、この本は多彩な要素からなる自然ツーリズムを、様々な視点から解説している。この本を通じて、既存の学問分野と自然ツーリズムの関連性や自然ツーリズムと社会の関わりについて、知って欲しいと思う。 (朝倉書店)


原発事故と放射線のリスク学

中西準子

リスク学の専門家である著者が、福島の原発事故のリスク評価を行う。関連する専門家や福島県の職員などのインタビューや対談なども掲載しており読みごたえがある。世間で「危ない、危険」と騒がれるものごとについて、原発事故を例にリスク管理の観点から考えることができる。 (日本評論社)


ご冗談でしょう、ファインマンさん

R.P.ファインマン

ノーベル賞受賞の物理学者の、奇想天外な発想やその柔軟な思考、少年時代などを描いた書籍。コストパフォーマンスが重要視され、好奇心を持ったり、物事に熱中することが軽視されがちな今、そんな白けた考えから抜け出すきっかけになる本だ。 (大貫昌子:訳/岩波現代文庫)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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