天文学

重元素の起源

金やプラチナは宇宙のどこから来たのか ~合体する中性子星の観測


田中雅臣先生

東北大学 理学部 宇宙地球物理学科 天文学コース(理学研究科 天文学専攻)

出会いの一冊

マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿 宇宙の物質の起源に迫る

田中雅臣(ブルーバックス)

宇宙にはまだ解明されていない「謎」がたくさんあります。普通の教科書には宇宙に関して「わかっている」ことが書かれていますが、この本には宇宙に関して「わかっていないこと」つまり「謎」がたくさん紹介されています。

謎があるから私たちは日々研究に励んでいて、少しずつ人類の知の地平線(「わかっていること」の範囲)を広げようとしています。そのような研究の最前線を味わってもらえると嬉しいです。

こんな研究で世界を変えよう!

金やプラチナは宇宙のどこから来たのか ~合体する中性子星の観測

地球の中では作られない重元素

私は「金やプラチナのような重い元素が宇宙のどこでできたのか」という謎に迫る研究をしています。例えば私の結婚指輪はプラチナ製なのですが、このプラチナがお店に並ぶ前には、地球上のどこかの鉱山で採掘されたはずです。

地球の中でプラチナは作られませんので、地球ができたときにはプラチナは既に含まれていました。ではプラチナは宇宙のどこでできたのでしょうか?

中性子星の合体が重元素の起源?

実はこの問題の答えはまだ解明されていません。元素の周期表で鉄までの元素は星の中でできるということが知られているのですが、それより重い金やプラチナなどの元素の起源はわかっていません。この謎を解くために研究者たちは50年以上様々な研究に取り組んできました。

近年、「中性子星」というとても密度が高い特殊な星が合体することで、金やプラチナなどの元素ができるのではないかと考えられています。このような現象は合体するときに「重力波」を出すことが予想されています。2017年に重力波の観測によって中性子星の合体現象が観測され、その現象からの光 (電磁波)も観測されました。

光の観測を積み重ね謎の解明へ

私は中性子星の合体で重い元素が作られたときに、どのような光のシグナルが放たれるかを研究しています。そのシグナルを分析することで、中性子星合体がどのような元素をどの程度宇宙空間に放出しているかを測定することができるからです。そのような測定を積み重ねることで、金やプラチナなどの重い元素の起源を解明したいと考えています。

宇宙の観測には巨大な望遠鏡を使います。この写真は日本がハワイに設置した「すばる望遠鏡」で、光を受ける鏡 (写真の下側で円形に写っているもの)の直径は8.2mにもなります。以前はよく観測データを取得しにハワイにも行っていて、そのときに撮った写真です。
宇宙の観測には巨大な望遠鏡を使います。この写真は日本がハワイに設置した「すばる望遠鏡」で、光を受ける鏡 (写真の下側で円形に写っているもの)の直径は8.2mにもなります。以前はよく観測データを取得しにハワイにも行っていて、そのときに撮った写真です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

小学校・中学校の時から漠然と宇宙に興味があったのですが、宇宙といえばロケットだろうと思って最初は大学の工学部に進むつもりでした。

大学に入ってからの講義で、宇宙には多くの謎があること、そしてその謎を追求するのは天文学や宇宙物理学という分野であることを初めて知って、理学部に進むことにしました。それからはどんどん宇宙の研究の面白さにはまってしまい、今でも研究を続けています。

天文学の観測所はたいてい暗い場所にあるので、夜空を見上げると肉眼でも多くの星が見えて、小さい頃に抱いた宇宙への興味を思い出させてくれます。これは長野県にある木曽観測所で観測しているときに、夜に外に出て自分の小さなカメラで撮った写真です(実際の研究はこのような画像で行うわけではありません)。ちなみに、星座はほぼ全く分かりません。
天文学の観測所はたいてい暗い場所にあるので、夜空を見上げると肉眼でも多くの星が見えて、小さい頃に抱いた宇宙への興味を思い出させてくれます。これは長野県にある木曽観測所で観測しているときに、夜に外に出て自分の小さなカメラで撮った写真です(実際の研究はこのような画像で行うわけではありません)。ちなみに、星座はほぼ全く分かりません。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「重力波天体からの電磁波放射と宇宙の重元素の起源に関する研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

東北大学は日本で天文学を本格的に学べる数少ない大学の一つです。学部2年生の後半から数学や物理の講義に加えて天文学・宇宙物理学の講義も始まり、非常に恵まれていると思います。

在籍する研究者の研究分野も天文学のほとんど全てをカバーしていて、私も研究者として毎日楽しい環境ですし、宇宙の謎に取り組みたい学生さんにはお勧めです。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して

マーカス・チャウン、訳:糸川洋(ソフトバンク文庫)

私たちの身の回りにある元素は宇宙のどこでできたのか。その謎を解くための研究者たちの歩みがいきいきと紹介されています。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

間違いなく天文学ですね。宇宙の謎は、私たち小さな人間が自分の脳を使って考えられる「一番スケールが大きい問題」だと思っているので、やはり楽しいです。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

軽音サークルでバンドをやっていました。中学生の頃からバンドでギターを弾いていて、人の前で何かすることには慣れていたので、研究者になっても少し役立っている気がします。。。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

自分の研究分野以外の本を読むことですかね。特に「勉強の仕方」や「頭の使い方」を勉強するのが好きです。


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ