核融合発電は、太陽エネルギー同様に無限のエネルギーが取り出せると期待され、世界各国で研究が進められています。化石燃料もウラン燃料も100年程度で燃料資源は枯渇するでしょう。再生可能エネルギーが注目されていますが、実は化石燃料も再生可能エネルギーも、すべて太陽からのエネルギーによるものです。核融合の研究は、その太陽を地上に創り出し、そのエネルギーを有効に利用することを目的とした研究と言えます。
高温プラズマ状態を維持する新たな制御法は経済性も考慮
核融合反応を起こすためには、軽くて燃えやすい水素の同位体である重水素、三重水素の2つの原子核同士を毎秒1000キロメートル以上のスピードで衝突させ、1億度以上の高温プラズマを作り、閉じ込める必要があります。私は、この高温プラズマ状態を維持するために、電磁波を用いたプラズマ制御について研究しています。
従来の制御法では、高温プラズマの維持・閉じ込めを劣化させてしまうことが問題でしたが、ミリ波という非常に周波数の高い電磁波を用い、ミリ波帯大電力技術という高効率な設備装置を開発し、この問題を解決しました。核融合発電が成功するには、その経済性も非常に重要です。この設備装置は安価で、その点でも貢献します。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→自動車メーカー、重電メーカー、電力会社、鉄道、公務員
- ●主な職種は→技術総合職、開発・設計職、公務員
- ●業務の特徴は→ものづくり、インフラ関係
分野はどう活かされる?
近隣の研究所と共同研究を行っているため、厳しい安全ルールを守る意識が培われています。それが、高電圧機器を扱う電力会社、重電メーカー等で活きています。
核融合研究の分野は、めまぐるしく変化するIT分野とは異なり、10年単位で1ステップを刻む長期的な研究分野です。世界中の先進国(EU、日本、米国、ロシア、中国、韓国、インド)が共同で、核融合発電の科学的原理実証をめざし、南フランスに国際熱核融合実験炉:ITER(イーター)を建設中です。このITERではまだ発電は行ないませんが、成功すれば人類のエネルギー問題は解決します。実験炉であるITERは2025年に最初のプラズマを着火し、2035年から本格的な核融合実験を開始しますが、成果が出るのは開始から5年から10年後で、さらにその約20年後に建設する原型炉、その約20年後に建設する実証炉で、ようやく現在の発電所並みの電気出力が得られるようになります。つまり、若い方たちがどんどん入ってこないと完成しない分野なのです。「自分で太陽を作りたい」という強い意志をお持ちの方に、この分野をお勧めします。
茨城大学は、水戸・日立・阿見の3キャンパスに分かれ、近隣には様々な分野の国立研究所がたくさんあります。また水戸市と日立市の間に位置するひたちなか市には、邦楽最大の野外フェスであるロックインジャパンフェスティバルで有名な国営ひたち海浜公園があり、春はネモフィラ、秋にはコキアの紅葉で世界の絶景を織りなしています。太平洋岸に近いためマリンスポーツも盛んで、大洗海岸、阿字ヶ浦海岸、河原子海岸等では1年中サーファーたちが集い、若者の空間を作り出しています。