再生可能エネルギーで期待されるものの1つに、海洋温度差発電があります。この発電は、海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行います。私たちは、海洋エネルギー研究が盛んな佐賀大学において、海洋温度差発電プラントの研究を行っています。
海洋温度差発電の仕組みは、まず海の表層の25〜30℃の温かい水で、タービンを回すための液体を蒸発させます。ここでは、液体に沸点の低いアンモニアを用います。アンモニアは蒸発し、その蒸気がタービンを回し発電します。その後、蒸気は、ポンプで汲上げた深海の3〜5℃の冷水で液化し元に戻します。このサイクルを繰り返すと持続的に発電が行われるという原理です。私たちは、温海水と冷海水の流量や温度を入力すると、発電量やシステム内の温度、流量、圧力などの状態量が計算できるシミュレーションモデルを開発しました。これによって、発電プラントの運転状況を事前に検証でき、また、発電プラントを適切に制御する目的にも利用できます。また、発電プラントの開発においても有用なデータとなります。
海洋温度差発電は、熱源に海洋の温度差を用いていて化石燃料を必要とせず、発電時に二酸化炭素の排出がないため、環境にやさしい半永久的に利用可能なエネルギーと言われているのです。
一般的な傾向は?
- ●主な業種→電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、電気業、情報・通信業他
- ●主な職種→開発技術者、製造技術者、情報処理・通信技術者、ソフトウェア開発他
分野はどう活かされる?
シミュレーションを行うために、現象を系統的に捉え、論理的に考えることは、海洋エネルギーのみならず、あらゆる種類の技術者に必要とされます。
現象をコンピュータで模擬するシミュレーションは、物理学、数学の知識が必要です。また、「情報」で学ぶプログラミングも使います。しっかり学んでください。
佐賀大学理工学部では、産業構造の変化に柔軟に適応できる幅広い教養と理工学基礎力を土台として、複眼的視点・俯瞰的視野から社会の広い分野で活躍できる科学・技術の専門的素養を身につけることができます。
興味がわいたら~先生おすすめ本
未来をひらく 海洋温度差発電
上原春男
地球でいま起こっている環境破壊、温暖化、エネルギー不足などの課題の解決を海に求め、エネルギーとは何かから始まり、人類の進化とエネルギーとの関連、海の水からエネルギーを取り出す「海洋温度差発電」や、海洋温度差発電で利用した海水からの真水の製造などの複合的利用について解説する。写真や図表がふんだんに使われている。 (サンマーク出版)