医療診断用のバイオセンサは、近年様々なものが生み出されています。バイオセンサとは、生体内で化学反応を制御している酵素などを用い、生体内の異常を検知するセンサとして利用したものです。
注目される新しいバイオセンサの1つに核酸DNAを使用したセンサがあります。核酸DNAは4種類の塩基を含めた膨大な種類の核酸配列で構成されています。立体構造をなすそれらの多様な核酸配列は、生命活動をになう特定のタンパク質と強く結合します。この核酸分子の性質をバイオセンサとして利用する技術が確立されるようになりました。この新規センサを使うと、様々な重篤の病の診断に生かすことが期待されます。
がんやアルツハイマー病、感染症の血液検査が迅速に
私は診断用のバイオセンサの研究開発を行っています。その中で、タンパク質を特異的に認識する核酸分子を探索し、特定の疾病を起こす標的分子に対する結合を飛躍的に改良した新規バイオセンサの開発に成功しています。
この研究がさらに進めば、がんやアルツハイマー病、感染症などが、血液検査により5分で診断できる可能性があります。早期診断により治すことができるでしょう。また最近はうつ病などの神経疾患についても、様々な診断法が提案されています。この核酸分子は任意の疾病マーカーを特異的に認識することができるので、様々な病気に対して、簡単に、迅速な診断が可能になると期待しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→医薬品製造業
- ●主な職種は→研究者、開発技術者
- ●業務の特徴は→がんの治療薬、診断薬などを研究・開発している人が多いです。
分野はどう活かされる?
研究室で行ったバイオセンサ開発をそのまま、診断や創薬の分野に応用する研究を行っている人もいますし、その知識と技術を活かして、別の診断薬や創薬の研究に携わる人も多いです。博士課程まで進学して博士号を取る人も多く、そういう人は自分が大学で行った研究を、充分活かす仕事ができています。しかし最近は、博士号をとっていなくても、大学での研究と関連のある仕事をできる人がかなりいます。
超高齢化社会に突入した日本では、「病気にならないこと」が一番大事です。病気にならないようにするためには何が必要か、そのためにどんな技術が必要かを考えてみてください。そんな技術を今まさに開発しています。
生物機能・バイオプロセスを工学的視点から研究する学科としては、東京農工大の生命工学科は、日本でもっとも多彩な研究分野と人材を揃えた学問の場だと思います。この分野の最先端と呼ばれる研究テーマは、ほとんど全て網羅されていると思います。
特徴は、研究発表や議論の仕方を徹底的に指導する点で、国内外の学会で学生にも積極的に発表させ、そのたびに徹底的に訓練します。社会に出て一番重要なのは、自分が考えていることを他人がわかるように説明できることであり、誤解がなく正確な議論ができるようになることが、社会で有用な人材になるための第一歩だと考えております。英語での発表も奨励しており、国際会議での英語の口頭発表を、積極的に支援する制度も多数用意しています。
バイオテクノロジーの分野は、これから他の最先端技術との融合が進んでいきますので、他分野の研究者との交流も大事にしており、専門外の人にわかるように自分の研究や考え方を説明する練習も重視しています。ほとんどの学生が修士課程まで進学しますが、就職率が大変良いのは、人事面接でその発表・質疑応答能力を評価していただいているのだろうと思います。
興味がわいたら~先生おすすめ本
DNAと遺伝情報
三浦謹一郎
分子生物学の入門書。バイオテクノロジーに興味を持つ人であれば、まずは分子生物学の基礎を勉強する必要があるが、最初に読む本としては非常に良い本だ。古い本ではあるが、RNAの世界的研究者により分かりやすく記述されている。 (岩波新書)