超高層ビルはより高く、地下鉄はより深く、我々の生活範囲は地上、地下へとさらに広がっています。高層ビルや地下鉄が、地震などの自然災害から守られているのは、構造物自体の強度が高まっただけではなく、地盤を構成する「土」の性質が解明されてきたことも大きな要因です。私たちの足元、地球の表層を支えるのが地盤工学です。
地盤陥没のメカニズムを解明
私は、地盤工学のなかで、災害や特有の現象のメカニズムを解明し、土をめぐる災害の程度や対策の効果を予測することによって、最適な対策方法を提案・検討することを目的として研究しています。例えば足元の土は、様々な種類・形・大きさ・硬さの粒の集合でできていますが、とても複雑な動きをします。その粒子の動きの1つ1つをコンピューター内にシミュレーションで再現しています。また、ふだんは見えない地面の下の水の流れを捉えることも重要です。解明されていないこともまだまだあり、面白い分野です。
また近年、全国各地で地盤の陥没災害が発生しています。陥没は、都市部では主に下水管の劣化による土の流出が原因で発生しています。そこで、私たちは空洞発生から陥没に至るメカニズムを解明するため、模型実験と数値解析を行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→国家公務員、地方自治体の公務員、研究者、建設コンサルタント、建設会社
- ●主な職種は→建設プロジェクトのアセスメント、調査、設計、維持管理、計画
- ●業務の特徴は→プロジェクトの全体のリーダー的存在
分野はどう活かされる?
大きな河川流域をどのように、効率的に守りながら、都市を管理していくのかを調査、設計、計画したり、実際に造ったりします。もちろん、都市・地域や国の計画も行います。
地震、液状化、土砂災害、豪雨、台風、洪水などの自然災害と、それによる生活圏の被害は甚大化、複雑化しています。これを正しく理解し、備えることが重要です。地盤工学は皆さんの足元を支える工学ですので、防災においても重要な役割を果たします。
また、環境保全や、エネルギー開発においても、地盤は大きな関わりを持ちます。都市では地下空間の利用なしでは成り立ちません。ここでも地盤工学は大きな役割を担います。その意味で、安心・安全、持続可能な社会を作るプロジェクトの根幹を支える工学の学問と言えます。
明治38年に創設され、百余年の間、7万人を超える、優れた「実力のある」人材を輩出し、我が国の産業社会の礎を築きその繁栄を支えてきました。つぎの100年も、伝統とその強みを活かしながら一層個性輝く自立性に富む人材を育成します。
工学の進化は、社会に劇的な変化をもたらしますが、新たな価値の創出がこれまでに出会ったことのない幸をもたらします。本学は工学を常に客観的に見つめる「心の工学」を実践し、心の豊かさを実感できる社会の実現に貢献いたします。