地盤工学

将来の有望なエネルギー資源=メタンハイドレートの採取で地盤はどうなる


山下聡 先生

北見工業大学 工学部 地球環境工学科 環境防災工学コース/工学研究科 工学専攻 社会環境工学プログラム

どんなことを研究していますか?

将来のエネルギー資源の一つとして注目されているものに、メタンハイドレートがあります。メタン分子が水分子で囲まれた結晶構造物のことで、海底に大量に埋蔵されています。特に日本海に多く存在することから、未開発のエネルギー資源としても有望視され、日本を「隠れた資源大国」と表現する人もいます。

私が行っている研究は、海底表層に存在するメタンハイドレートを対象として、その存在形態と周辺地盤の特性、ハイドレート採取に伴う地盤変動などに関する研究を行っています。

海底に地すべりや沈下、さらには地球規模の環境変動を引き起こすかも

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メタンハイドレードの採取時に、温度上昇や圧力低下が起こって海底下のメタンハイドレートが分解すると、メタンガスを放出するだけでなく、凍土のように固結したメタンハイドレートを含む堆積物が解凍して海底に地すべりや沈下を引き起こす可能性もあります。また、メタンガスは二酸化炭素の20倍以上の温室効果のあるガスです。ですから、ハイドレートの分解によるメタンの放出は、地球規模の環境変動に様々な影響を与えることが想定されます。

将来エネルギー資源として採取することを見据えて、メタンハイドレートの採取や分解によってどのような地盤現象が発生し、災害を防ぐためにはどのような対策をすべきかについて研究しています。

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オホーツク海網走沖で採取したメタンハイドレート

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→建設業、設計コンサルタント、公務員
  • ●主な職種は→技術者
  • ●業務の特徴は→設計、施工管理、計画、研究開発
分野はどう活かされる?

社会基盤施設を計画、設計、施工する会社で働いたり公務員となったりしてしており、どのような施設であっても地盤の上に成り立っているので、地盤工学の分野は役に立っています。

先生から、ひとこと

大学生活は、専門的な知識を深めてゆく過程の中で、自己形成をしていく場でもあります。そのためには、様々なことに興味を持つ広い視野も必要。最初は漠然とした目標でもいい。それが途中で変わってもかまいません。失敗してもよいので、興味があることはなんでも前向きに実践してください。それが必ず人生の成果となります。

先生の学部・学科はどんなとこ

地方大学ですが、地盤工学分野の教員が7名在籍しており、国内主要大学と対等なスタッフを有しています。土木系学科の学生数は1学年110名と国立大学では多い方です。寒冷地に大学が立地していることから、寒冷地に関する教育・研究を開学以来続けており、寒冷地地盤工学分野では国内トップクラスの研究成果を挙げています。

工学系の単科大学であることから、全学生数は少ないですが、そのことがかえって学生と教員との距離を短くし、きめ細かな教育を行えています。北の大地にあこがれ、学生は日本全国から集まっており、地元出身者(自宅通学者)は1割に満たないです。

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ロシア・バイカル湖でのメタンハイドレート調査風景

先生の研究に挑戦しよう

<テーマ例>
・地震時の地盤の液状化現象
・メタンハイドレート含有地盤の安定性

興味がわいたら~先生おすすめ本

ドクターモグの地盤工学入門

地盤工学会のホームページ。ドクターモグが、土のなりたちや性質、地盤に関係する構造物、地震や雨よる地盤災害など地盤工学の分野で扱っている内容を、イラストや写真を多く用いて楽しく解説。「ドクターモグの実験教室」(https://www.jiban.or.jp/?page_id=3149)に掲載の地盤に関する実験もみてみよう。 (地盤工学会)


剣岳 点の記

地盤工学も含まれる土木工学において、測量技術はどの場面でも必要な基礎分野だ。この映画は、日本地図を作成するために先人が行った測量作業について描いたものだが、その苦労や意気が感じられる。 (「剣岳 点の記」製作委員会 新田次郎:原作)


エネルギー革命 メタンハイドレート

松本良

これからのエネルギー「メタンハイドレート」を理解するための入門書として良本。生成や集積の仕方、分布状況、地球環境とのかかわりなど、メタンハイドレート全般について平易に解説されている。 (飛鳥新社)


希望の現場 メタンハイドレート

青山千春、青山繁晴

新資源メタンハイドレートの研究者で、魚群探知機を使った探査方法の特許を持つ青山千春先生(東京海洋大学)による著書。メタンハイドレートの国内での開発状況、実用化に向けての課題など、メタンハイドレートの現状を知ることができる。 (ワニ・プラス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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