物を自由自在に操るには、どうすればいいか?を考えるのが、制御・システム工学です。対象は何でもいいのです。例えば、部屋の温度を25度にして、快適に生活したいとしましょう。その場合、25度を維持するように、エアコンは風の強さや温度を調整します。このような制御は、私たちの身の回りの至る所で活かされています。快適・安全・省エネには欠かせない技術を提供する学問分野なのです。
この分野は、古くから、工学部の電気や機械に関連する学科で学ばれていました。そのため、制御したい対象物は、電気や機械に関連するものだけと思われる傾向がありました。しかし、最近では、この分野のノウハウは非常に広い範囲で活用できることが認識され、社会インフラや生物システムなどの制御にも、研究領域は広がりつつあります。開拓すべき領域は無限にあり、また、研究による波及効果も計り知れません。夢のある分野です。
自然治癒力を持つ「より丈夫」で「より柔軟」な社会システムの実現へ!
私の研究も、その一つです。私は、「自己組織化」に着目し、それに従来の制御に関する知識を融合させることを目指しています。「自己組織化」とは、ランダムだったものから、自然に秩序が生まれたり、構造が形成されたりすることです。人間には、軽い傷を負ったとき、自然に治癒する力があります。この自然治癒力のメカニズムは「自己組織化」が根底にあると思われます。「自己組織化」の手法を用いれば、複雑化する交通システムやエネルギーシステムなどの社会システムを、よりシンプル、より丈夫、より柔軟なものに作り上げることができると考えています。
例えば、様々な方式で発電される電力を、効率よく安定的に消費配分するネットワークシステムについて考えてみましょう。太陽電池、燃料電池、スマートメータなど個別の研究は進展していますが、これらを相互につないだ「大規模なネットワークシステム」の丈夫で安定的な運用はそれほど簡単でないことが、容易に想像できます。私は、そのような問題を「自己組織化」という考え方で解決できるのではないかと考えています。
私の研究室では、たくさんの小さなロボットに自己組織化のタネとなるシンプルなルールを埋め込み、そのルールに基づいてロボットたちが協力しながら自己組織的に振る舞うことについて、理論と実験の両面で研究しています。また、そのような考え方を、ロボットだけでなく、生物システム・エネルギーシステム・熱音響システム・情報システムなどにも応用したいと思い、その夢を追い続けています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→自動車、総合電機、電力・電気、エネルギー、鉄道 他
- ●主な職種は→開発、研究、設計、企画 他
分野はどう活かされる?
我々の身の回りにある家電・自動車・情報機器の開発、社会を支える電力・ガス・鉄道の設計・管理などに活かされています。さらに、それら以外の幅広い業種からも多くのニーズはありますが、それに応えるだけの学生の絶対数が足りていません。
勉強はしんどいですね。でも、研究は楽しいのです。楽しい研究にたどり着くには、ある程度の知識が必要です。この知識を効率よく獲得する手段が「勉強」なのです。このことがピンとこない人は、勉強→筋トレ、研究→スポーツ、知識→体力と置換えれば、理解できるのではないでしょうか。高校時代の勉強(筋トレ)は苦しいかもしれません。でも、大学では、毎日が楽しくてワクワクするような研究が待っています!
大阪府立大学工学域電気電子システム工学課程では、電気や情報に関する「ハードウェア」と「ソフトウェア(プログラミング)」がバランスよく学べるカリキュラムを提供しています。この課程で実施している研究テーマも同様にバランスがよく、学部・大学院の6年間を通して、視野の広い技術者・研究者を育成しています。そのため、実社会からの評価が極めて高く、毎年、多くの有力企業からは「熱烈なラブコール」が学生へ送られています。