計測工学

高温時でも使える超音波センサを開発し、安全に貢献


小林牧子 先生

熊本大学 工学部 情報電気工学科/自然科学教育部 情報電気工学専攻

どんなことを研究していますか?

コウモリは口から超音波を発し、反響する位置を利用して、エサの虫の位置を計測することが知られています。同じ原理を人間社会で利用したものに、超音波センサがあります。生体内から反射した超音波(エコー)を受信する医療分野や、空港の手荷物検査などの非破壊検査に利用されています。被ばくの心配がないため、X線のように放射線管理も不要で装置さえ用意すればふつうの病室でも行えます。また動いても検出できるので、車と壁の距離を測定し衝突回避するパーキング・アシスト機能にも使われています。

スマート工場の実現を目指して

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私は超音波計測を専門にします。メインのテーマは高温状態における超音波計測ができるような、超音波センサの開発です。超音波は物体内部のまずい状態を検出できる、すばらしい方法なのですが、高温では使えないことが多いというデメリットがあります。また、人によって測定結果が異なることもあるというのが問題でした。高温でも使え、しかもセンサを貼りっぱなしにできるようになると、常に同じ条件で測定できます。

これが実現すると、工場が稼働中の高温の状態でも測定できるようになります。その結果、リアルタイムで機械の動作状況がより詳細に把握できるようになり、スマート工場の実現化に貢献したいと考えています。

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シカゴでの国際学会にて

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→メーカー、電力会社
  • ●主な職種は→エンジニア
分野はどう活かされる?

センサの企画開発や非破壊検査業界で頑張っているようです。

先生から、ひとこと

私の主な学問分野は「計測工学」という分野です。ある物理量を緻密に計測することは、実は非常に難しいのです。例えば、お湯の温度を測定する場合、温度計を使うでしょう。しかし、温度計の温度はたいていお湯の温度より低いので、温度計を入れたことでお湯の温度が下がるかもしれません。お湯の温度と同じ温度の温度計を入れるのはよい考えですが、そもそもお湯の温度がわかりませんね。お湯になる前から温度計を入れるのが一応よいのでしょうが、温度計が入れてある場合とない場合で温まり方が違うかもしれません。こんなことを考えながら、測定が難しい状況でいかに測定を行うかを考えるのが、この学問なのです。

先生の学部・学科はどんなとこ

ベンチャー企業も設立しており、超音波計測に関してはかなり実用に近い研究を行っています。

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研究室のみなさんと

先生の研究に挑戦しよう

・Arduinoと超音波センサを使って超音波距離計を作ろう
・レゴ・マインドストームで多様なセンサを駆使してサッカーロボットを作ろう

興味がわいたら~先生おすすめ本

なんでも測定団がいく

武蔵工業大学:編

工学では知るために「測る」ことは重要で、計測工学という分野もある。しかし、この本では、物理的なことだけでなく「なんでも」測るという。人体に関すること、地球に関すること、情報や社会など形にないものも測る。その方法とは。難しいと思われる測定を、どうやったらできそうかを考え、試行錯誤していくことが大切だということがわかってもらえたらうれしい。 (ブルーバックス)


SLAM DUNK

井上雄彦

バスケ漫画の金字塔。バスケへの興味の有りなしに関わらずストーリーに引き込まれるのは、人としての深い成長を描いている点と、最後まであきらめてはいけない、人はやり直せる、ということを学ばせてくれるからだろう。 (ジャンプコミックス)


二重らせん

ジェームス・D・ワトソン

DNAの二重らせん構造をどうやって解明したのか、一側面から見たドキュメント。発見者の一人、ワトソンが語る。偉大な発見に貢献しながらワトソンらに否定的な評価を受けたロザリンド・フランクリンという研究者がいるが、彼女について書かれた著書『ダークレディと呼ばれて』なども併せて読むと、研究者倫理についても学べる。 (江上不二夫、中村桂子:訳/ブルーバックス)


理系のための研究生活ガイド テーマの選び方から留学の手続きまで

坪田一男

研究者になるための8つのチェックポイント、大学と研究室を選ぶ11のポイント、研究テーマを決める14の原則といったように、具体的に理系の大学で研究していくのに必要なことがわかる。とりわけ理系の大学院に入るとはどういうことなのかが、何となくイメージできるだろう。大学に進む前にぜひよんでほしい。 (ブルーバックス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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