コウモリは口から超音波を発し、反響する位置を利用して、エサの虫の位置を計測することが知られています。同じ原理を人間社会で利用したものに、超音波センサがあります。生体内から反射した超音波(エコー)を受信する医療分野や、空港の手荷物検査などの非破壊検査に利用されています。被ばくの心配がないため、X線のように放射線管理も不要で装置さえ用意すればふつうの病室でも行えます。また動いても検出できるので、車と壁の距離を測定し衝突回避するパーキング・アシスト機能にも使われています。
スマート工場の実現を目指して
私は超音波計測を専門にします。メインのテーマは高温状態における超音波計測ができるような、超音波センサの開発です。超音波は物体内部のまずい状態を検出できる、すばらしい方法なのですが、高温では使えないことが多いというデメリットがあります。また、人によって測定結果が異なることもあるというのが問題でした。高温でも使え、しかもセンサを貼りっぱなしにできるようになると、常に同じ条件で測定できます。
これが実現すると、工場が稼働中の高温の状態でも測定できるようになります。その結果、リアルタイムで機械の動作状況がより詳細に把握できるようになり、スマート工場の実現化に貢献したいと考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→メーカー、電力会社
- ●主な職種は→エンジニア
分野はどう活かされる?
センサの企画開発や非破壊検査業界で頑張っているようです。
私の主な学問分野は「計測工学」という分野です。ある物理量を緻密に計測することは、実は非常に難しいのです。例えば、お湯の温度を測定する場合、温度計を使うでしょう。しかし、温度計の温度はたいていお湯の温度より低いので、温度計を入れたことでお湯の温度が下がるかもしれません。お湯の温度と同じ温度の温度計を入れるのはよい考えですが、そもそもお湯の温度がわかりませんね。お湯になる前から温度計を入れるのが一応よいのでしょうが、温度計が入れてある場合とない場合で温まり方が違うかもしれません。こんなことを考えながら、測定が難しい状況でいかに測定を行うかを考えるのが、この学問なのです。