計測工学は、文字通り測定対象を測ることですが、長さや重さだけではありません。私の研究テーマである、人間が話している時の舌の動きや、手や視線の動きを調べることも計測です。話す動きは、舌に磁石をつけ、磁気センサで測ることができます。手の動きは、データグローブという指の曲がり具合を計測するセンサを用いれば、計測できます。
得られた情報を分析することで、その動きを応用した新しいコミュニケーション装置の開発に結びつけます。口の中の声道形状のデータを生成して、それをもとに模倣した音声を合成することができます。手の動きをデータグローブで計測し、解析することで、母音の音声合成につなげることができるようなります。
視線の動きでコンピュータのマウス操作ができる
私は情報計測処理、医用福祉工学などを専門にしています。コンピュータを使いこなし、人間の可能性を引き出すインタフェースの装置を作ることに取り組んでいます。例えば、手の動きを音声合成につなげる研究は、将来的には障がい者が手の動きで言葉を話すような支援システムの実現につながると考えています。現在、母音の合成はすでに実現しています。今後、子音も含めた合成の研究を進める予定です。
視線の動きの計測からは、まばたきでコンピュータのマウス操作ができるようになることが考えられます。そのための、画像処理を用いた視線検出システムの開発も行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報サービス業、電気機械器具製造業、精密機械器具製造業
- ●主な職種は→システムエンジニア(ソフトウェア開発)、電気通信技術者
- ●業務の特徴は→ICTシステムの開発
分野はどう活かされる?
研究室の卒業生は、情報サービス、電気機械器具製造業などの、いろいろな企業に就職しています。それらの企業で、情報処理(ICT)システムの開発や、製品開発、機器制御のソフトウェアシステムの開発などの業務についています。計測そのものを職業にしている例は少ないですが、研究室での研究を進めるための、各種のセンサを利用するためのプログラミング、計測データ取得のためのプログラム作成、データ処理とその結果の、処理の自動化・効率化のための工夫などの経験が仕事に活かされています。
計測はあらゆる分野の基礎であると同時に、計測結果をいかに応用につなげるかという発想の楽しさもあります。直接的な計測だけでなく、関係する現象から間接的に対象物の状態を推定するアイデアを考えることも面白いところです。
熊本大学工学部情報電気工学科では、電気工学・電子工学・情報工学の3つの教育プログラムが用意され電気情報系の幅広い分野の教育研究を行っています。1年次に基礎科目の学習を進めると同時に研究室の研究テーマを知ることで分野への理解を深め、2年次から興味ある教育プログラムを選択して専門性を高めていくことができます。