生産工学・加工学

体への負担の少ない医療部品、医療機器を作る~医学と工学の連携


新谷一博 先生

金沢工業大学 工学部 機械工学科/工学研究科 機械工学専攻

どんなことを研究していますか?

近年、医学と工学の分野はますます密接に関わりを持つようになっています。最新の工学技術が医療を支える代表的な例として、インプラントがあります。インプラントは、人工歯の埋め込み材だけではなく、体内に埋め込まれる医療用部品全体を差します。骨折の治療で骨を固定するためのボルト、心臓ペースメーカーや人工内耳の埋め込み、あるいは豊胸手術で皮下浅く埋め込むのもインプラントです。こうした医療用部品には、工業用とは異なる開発が必要です。生産性ばかりでなく、人にやさしいものづくりを考えなければならないのです。

患部にフィットするインプラントや高骨伝導性を有する人工骨の開発

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私は、生体適合性を考慮した材料成形に関する研究を進めています。その一つが、個々の患者の痛みを軽減し、患部にフィットするインプラント人工股関節の開発です。また、医学系大学の整形外科や脳神経外科との共同研究で、生体にやさしい医療機器や身体に及ぼす物理的負担の少ない手術器具の開発、高い骨伝導性を有する人工骨の開発を行っています。さらに、再生医療に使用する人工足場材料の有効性を遺伝子解析により明らかとしています。このように人にやさしい医療の実現に向けて取り組んでいます。

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材料表面を高倍率で観察する走査電子顕微鏡を前にしての指導の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→機械工学系の製品や医療機器の開発
  • ●主な職種は→生産技術、材料開発、設計、製品開発
分野はどう活かされる?

医学系研究者が気づけない工学的アプローチができることが強みです。

先生から、ひとこと

社会には病気で困っている人が多くいます。工学的知識を活用し、患者の負担が少ない治療に貢献できるようチャレンジをしてみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

金沢工業大学の医工融合技術研究所では、医学的な問題を工学から見た医工連携の形で解決する試みが図られています。

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学生間で研究の中間発表とディスカッションを行っています。

先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】
・早期骨形成はなぜ起こるか
・人工足場材の違いとDNAの変化
・骨芽細胞を活性化させるために必要な設計

興味がわいたら~先生おすすめ本

筋肉・関節の動きとしくみ辞典

川島敏生

医療において工学が活躍している。例えば、医療機器や手術器具の開発を医学と共同で行っている。また、人工股関節など生体の一部を機械部品へと置換する医療法もある。その開発に携わるなら生体の理解は必要だ。本書は、スポーツ選手のリハビリを行っている医師らによる本で、筋肉や関節の構造や働きについて、一般向けにやさしく書かれている。 (栗山節郎:監修/成美堂出版)


生物と機械

日本機械学会:編

生物が持つ優れた機能を機械に応用しようという学問がある。生物学・医学と工学との境界領域に位置し、生体工学、バイオエンジニアリングなどの分野だ。本書は生物を工学の目で見て、例えば、生物が持つ形態と強度の関係、自己修復力、センサシステムなどを機械技術にどのように応用できるか解説する。 (共立出版)


ものづくり機械工学

吉田嘉太郎、時末光

機械工学科に入学したばかりの大学生向けの教科書。ものづくりの基礎知識としての機械工学を、自動車づくりをもとに解説。ものづくりの歴史的な背景もわかる。 (日刊工業新聞社)


機械工学総論

日本機械学会:編

古代、ルネサンス、産業革命を経て現在までの、様々な機械工学の領域がどのように誕生したか、その歴史をたどりながら、機械工学とはどんな学問かを解説。もちろん機械工学の今もわかる。動力の歴史、輸送機関の歴史、情報通信機器の歴史など、技術史としても楽しめる。 (日本機械学会)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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