私たちの身の回りには、電気を発生する物質、光を発生する物質、光を吸収する物質などがあり、これらの物質の性質をうまく利用しながら科学技術は発展してきました。
例えば携帯電話の中身を見ると、通信電波を受け取る電子部品、受け取った電波を解析する電子回路、得られた情報を私達に視覚情報として伝達してくれるディスプレイ……などの様々な電子部品・電子回路で構成されています。「応用物性」と呼ばれる分野は、このような目的に適う物質を探究し、具現化する技術を編み出す分野で、既に知られている物質の性質を詳細に調べたり、新しい物質を人工的に作り出す研究に取り組んでいます。
応用物性の分野で、最近は、「プリンテッドエレクトロニクス」が注目されています。これまでの電子デバイスは無機材料を主に用い、真空技術・高温プロセスで作製されてきました。これに代わる材料として有機半導体を用い、インクジェットプリンターやグラビア印刷機の技術を用い、大気圧環境で電子デバイスを作製しようという試みです。低コスト化等の利点の他、紙のように折り曲げ可能なデバイスを造り出すことが目標の一つになっています。
プラスチック基板を用いた液晶ディスプレイの開発へ
私が取り組んでいるのは、液晶分子が分子自身で並ぼうとする性質を利用し、印刷や塗布に用いる装置を用いて、(1)大気圧環境で有機電子デバイスを作製する技術を開発する、(2)高温焼成を必要とする配向膜を不要とすることで、プラスチック基板を用いたフレキシブル液晶ディスプレイを実現するという二つのテーマの追求です。
これまでの液晶ディスプレイは基板にガラスを用いるため落とすと割れやすいという問題がありましたが、プラスチックを用いることが出来れば、低コスト化だけでなく、落としても割れず、折り曲げることも可能なディスプレイが実現出来ます。またスクリーン投影型のプロジェクターは、スクリーン自体がフレキシブルディスプレイに置き換わることになり、投影機は要らなくなります。様々な利用分野が広がると予想されます。
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「15.エレクトロニクス・ナノ」の「60.物性物理・量子物理、半導体、電子関連材料」
一般的な傾向は?
●主な業種は→エレクトロニクス産業分野
●主な職種は→設計開発分野、技術営業、フィールドサービス分野
●業務の特徴は→電子工学やソフトウェア技術を活かし、液晶ディスプレイの設計・開発や、製品の営業(パソコンや携帯電話を製造しているメーカーに対して)など
分野はどう活かされる?
シャープやジャパンディスプレイなどの液晶ディスプレイ製造メーカーにて、液晶ディスプレイの設計・開発や、製品の営業(パソコンや携帯電話を製造しているメーカーに対して)など。
長岡技術科学大学工学研究科電気電子情報工学専攻では、現代社会を支えるエネルギーシステムの技術者、高度情報化・効率的エネルギー・安全安心を指向した社会を支える、電子・光等の複合機能を持つ先端デバイスの技術者、及び情報通信制御分野を中心とする先端ハード・ソフトウェアの技術者を育成します。
特に、電子デバイス・光波エレクトロニクス工学コースでは、電子や光学に関する基礎から応用まで幅広く習得することを目指しています。IoT時代の情報通信機器には半導体・セラミックス・有機デバイス・レーザー・光スイッチ等のデバイスが用いられています。最先端の研究設備を備えた各研究室において、情熱にあふれた教員の指導のもと、一流の技術者・研究者を社会に送り出すべく教育が行われています。
資源の少ない日本は、技術力で世界をリードし、身の回りに溢れる電子デバイスは私達技術者の汗と涙の結晶とも言えます。スマホやゲーム機の中に入っている電子デバイスは、その多くは日本が世界トップの性能を実現したものです。そうした世界トップの技術を一緒に開発していきませんか。あなたの名前が冠されたデバイスが生み出せるかもしれませんよ。
【テーマ例】
プラスチックフイルムの上に液晶を配向させ作製するフレキシブル液晶ディスプレイの開発