第2回 第3次人工知能ブーム到来~プロ棋士を破り、AKB総選挙も予測された
人工知能研究とは、人間の脳のネットワークを模倣し、コンピュータによって脳に匹敵する知能を創りだそうという研究です。すなわち、人間が自然に行う学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする学問です。あまり強く言いすぎると語弊がありますが、人類の究極の目標は、人と同じものを創れるかということにあります。実はこれは神の視点です。キリスト教圏でこんなことを言ったら怒られてしまいますが、工学とはまさにその究極の目標を実現する学問です。
人工知能研究が最近どれだけ進んだか、例えばグーグルが人工知能を用いた完全自動運転車の研究を始めたことが話題になりました。車自身が“意識”を持ち、他の車と連携しネットワークを構築しながら、人の操作なしに車を自動運転するというのです。オバマさんは大統領選の予測に人工知能を最大限用い勝利に導いたことが有名です。あのアイドルグループAKBの総選挙でも使っています。
人の言葉を理解することで知られるIBMのスーパーコンピュータ・ワトソンは、全米クイズ王に勝ちました。ワトソンの人工知能は、書籍にして100万冊に相当する知識を搭載しています。その圧倒的な知識でもって、単に正解を言うだけでなく、皮肉やジョーク、高度なメタファー(隠喩・暗喩)さえも表現できるんです。将棋コンピュータは、プロ棋士をはじめて破って以来、年々進化し、もう人間は勝てないかもしれません。
これらはすべてこの1年以内で起こってきました。きっかけを作ったのは、機械学習という人工知能研究の1分野です。それにより人工知能は、いきなり異次元の世界に飛び込んだほどの衝撃的な大変化が起きています。私はこの研究を20年していますが、これほど世間が人工知能に注目している時期はありません。マスコミは、人工知能が世界を支配し、人の仕事が奪われるのではと、センセーショナルな騒ぎ立てをしています。60年代と80年代に人工知能ブームはありましたが、それをはるかに上回る空前の第3次人工知能ブームが到来しているのです。
機械学習については、後ほど説明します。次回からは人工知能について解説していきましょう。