ソフトコンピューティング

医師の負担を減らせ!コンピュータ自ら学習するディープラーニングで医療画像診断を


庄野逸 先生

電気通信大学 情報理工学域 Ⅰ類(情報系) メディア情報学プログラム/情報理工学研究科 情報学専攻

どんなことを研究していますか?

人工知能の急速な発展を支える技術に、ディープラーニングがあります。人の脳を模した多層のニューラルネットワークと呼ばれるモデルを用いて、与えられたデータの特徴を自ら学習し、機械に人のような知的な情報処理を行わせることを目標としています。このようなモデルは、iPhone やAndroid 携帯の画像や音声を認識する部分に利用されています。ゲームや囲碁といったエンターテインメント分野にも応用が著しいですが、とりわけ画像の認識に関しては、ディープラーニングは現状で最も優れた識別機械と評価されています。

高度化する医療に人工知能を活用したい

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私たちの研究室では、特に医療画像などに応用するための研究を重点的に取り扱っています。日本は、超高齢化社会に突入しつつ、医療のような特殊なスキルを持った人材に対して負荷が集中しつつあり、それは技術が先端化するほど顕著になっています。

医療用の画像診断機器は高度に進歩し、CTスキャンでは1人の患者に対して1回のスキャンで500枚以上の画像情報が得られるようにはなりましたが、この画像の中から病気を見つけるのは医師にとって非常に手間のかかる作業となっています。私たちは、医師の負担を減らすべく、人工知能を医療画像診断に応用する研究を進めているのです。実際に、ディープラーニングにより、肺の病気に対して、たくさんの画像の中から、どの画像のどの部分が病気と判断できるか示すことができるようになってきています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→メーカーやシステムソフトウェア会社
  • ●主な職種は→システムエンジニア
分野はどう活かされる?

ビッグデータと呼ばれる大規模なデータに対する分析能力から、お客様の好みなどを予測し、サービスの品質や売上などの向上に貢献しています。

先生から、ひとこと

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人工知能を含むソフトコンピューティング分野は、情報科学、データサイエンス、統計科学、脳科学といった様々な分野を含む幅広さを持ちます。それゆえ、かっちりとした学問体系を持つわけではありませんが、若い人の様々な分野からもたらされる自由な発想を受け入れる風土を持っています。興味があれば、そういう世界を覗いてみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

学部の1、2年次ではコンピュータの基礎を学び、3年次以降で専門分野を学びます。講義と実験のコンビネーションによって、様々なプログラミング言語や、音声や画像といったデータに関する取り扱いを習得することができます。4年次以降では研究室に所属し、学生が主体となって研究を楽しむことができます。

先生の研究に挑戦しよう

画像の認識実験などは高校生でも実現可能ですので、挑戦してみてください。Google は Colaboratory と呼ばれる実験環境を提供しており、無料で使用可能です。実験に用いるプログラムコードもWebに公開されているので、最初はコピーから始め、改良を加えて自分なりのものを作るのが理解への早道です。

興味がわいたら~先生おすすめ本

脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす

甘利俊一

今の人工知能ブームを支える神経回路モデルの背景がうまく説明されている。難しい言い回しもあるが、雰囲気は十分味わえる。 (ブルーバックス)


人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの

松尾豊

2015年の出版で少し古くなっているが、現在の人工知能界隈において何が起きているのかを知る最初の一歩にはちょうどよい。 (角川EPUB選書)


医用画像ディープラーニング入門

藤田広志:監修

医療の現場でどのように人工知能が使われているかを、初級者向けに記述した本。やや専門的な立ち位置だが、医用画像への適用などが特色で、今後どのような方向に向けて発展させるかを考えるのには適した内容となっている。 (オーム社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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