囲碁やチェスなどで人間のプロに勝つ人工知能は、事前に囲碁やチェスに関する知識を学習しています。しかし、予期しないことが起こる宇宙、例えば人工衛星では、事前にすべてのことを学習できず、最終的にはうまくいかない状況にぶち当たることもあります。そうした予想がつかない課題、不確実な課題、あるいは複雑な課題をコンピュータで解決しようとする計算技法を「ソフトコンピューティング」と言います。ソフトコンピューティングで、人間が思いつかなかった解を導き出すコンピュータシステムに挑んでいます。
例えば、新幹線や飛行機などの適切な形状をデザインする際にも、ソフトコンピューティングの技術を活用すると、燃費の良い形状、速度の速い形状、コストの安い形状など様々な要求に応える設計ができるようになります。実際、新幹線、航空機、JAXAの宇宙機の設計にソフトコンピューティングの技術は、使われています。
宇宙空間でセンサが故障しても大丈夫なように
私の研究事例を挙げると、我が国初の宇宙ステーション補給機の貨物配置を瞬時に計算するシステムを作りました。安定した軌道で運行させるには、貨物の重心を最適な位置にすることが重要なカギになるのです。このシステムはNASAや国際的な発表の場でも高い評価を得て、2009年の打ち上げに成功しました。また、宇宙空間でセンサ類が故障しても目的を達成する強靭なプログラムを開発、その機能を組み込んだ宇宙探査ローバの実証実験も予定しています。宇宙以外にも、交通、医療、介護、教育などの分野で、ソフトコンピューティングで様々な課題を打破していこうと考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報通信業
- ●主な職種は→技術系(ソフトウェア)
分野はどう活かされる?
システム設計
高校までは答えのわかっている問題を解くことを学んでいますが、世の中は答えのわからない問題ばかりです。そのような問題にチャレンジするのが大学です。みなさんと一緒にチャレンジできることを楽しみにしています。
電気通信大学は単科大学ですが、限られた分野では他の大学に負けない最先端の研究ができます。例えば、ソフトコンピューティングの分野では、その専門の先生が一番多くおり、この分野のトップカンファレンスであるGECCO(The Genetic and Evolutionary Computation Conference)では、2018年には本学の教員が中心となって開催しました。