ソフトコンピューティング

生物の視覚の謎に挑み「コンピュータビジョン」を創る


野村厚志 先生

山口大学 教育学部 学校教育教員養成課程 情報教育コース

どんなことを研究していますか?

人間の視覚には、奥行きや動きを検出する機能が備わっています。コンピュータとカメラを用いて、人間の視覚機能を実現する試みは、「コンピュータビジョン」と呼ばれています。監視カメラにおける不審者の検出、自動車の衝突回避のためのカメラシステム、工業用ロボットや工場での製品検査に応用されています。

コンピュータビジョンの研究では、人間や生物の視覚がどのようにして物や環境を認識しているのか、コンピュータアルゴリズムや視覚システムの構築を通じて明らかにすることも目的の一つとなっています。

生き物の視覚の仕組みをモデル化

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私は、生物の視覚の仕組みややり方を模倣したコンピュータビジョンのアルゴリズムを作り出す研究に取り組んでいます。具体的には、コンピュータビジョンの主要な課題である図地分離視(背景から対象とする物体を分離する)や、両眼立体視(両眼で立体感を感じる)のアルゴリズムを、生物の興奮・抑制による信号伝搬の仕組みの数理モデルを用いて実現する研究を行っています。

コンピュータビジョンの課題を解くアルゴリズムができれば、人工知能やロボット、セキュリティの分野に貢献できると考えています。将来は、人間と同様の視覚を持つロボットが出現することになるかもしれません。また、それとともに、人間の脳・視覚がどのようにして環境を認識しているのか、その理解につながることも期待しています。

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授業の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育関係
  • ●主な職種は→中学校教員(数学)
分野はどう活かされる?

教育学部ですので、多くの学生は中学校の数学の教員を目指しています。大学で学んだ情報科学・応用数学の知識を基礎として中学校の数学を教えることになり、どのように数学が社会で役立っているか、実感を持って教えることができると思います。

先生から、ひとこと

ソフトコンピューティングは既存の様々な分野と関係があります。高校では、文系・理系を問わず、いろんな勉強に興味を持って取り組んでほしいと思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

山口大学では、大学生全員がデータサイエンスを学ぶようなカリキュラムを進めています。ソフトコンピューティングもその中の一つの話題です。高校生の皆さんが山口大学に入学されると、現代社会でますます重要になっているデータサイエンスの入門的な授業を受講することになります。楽しみにしていてください。

先生の研究に挑戦しよう

・画像を人間の視覚に提示したとき、どのように知覚されるか、調べてみることは興味深いと思います。例えば、図地分離(背景から対象物を分離する)や立体の知覚において、様々に解釈できる画像にノイズ(雑音、余計なもの)を加えたとき、どのように知覚されるか、ノイズとの関係を調べることは興味深いテーマの一つであると思います。

・身の回りに見られるパターンについて、パターンが形成される様子を観察することも興味深いと思います。例えば、魚や昆虫などの生物の作るパターンが研究対象として挙げられます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

非線形科学 同期する世界

蔵本由紀

熱帯魚の表皮に現れる美しいストライプ、化学反応が作り出す時間振動とその2次元パターンなど、自然の中には、興味深いパターンが見られる。これらのパターンが生み出される過程を、例を挙げて説明している。興味深いことに、これらのパターンは、計算機科学の分野でも多くの業績を残している研究者・チューリングが提案したある微分方程式の枠組みで記述し説明できる。この本が、身の回りに見られる自然現象に目を向けるきっかけとなるよう期待する。 (集英社新書)


脳の話

時実利彦

大脳生理学を専門とする著者が、大脳皮質の働きについて様々な古典的実験をもとにわかりやすく書いている。古い著書であるが、脳における信号伝搬の様子、興奮・抑制の様子が説明されており、大変興味深い。 (岩波新書)


人工知能と人間

長尾真

コンピュータに知能を持たせるとはどのようなことなのか。著者の長尾先生は元京都大学総長、情報処理学会会長などを務めた、日本を代表する情報工学者。自然言語処理、パターン認識などの第一人者が、人工知能についての課題を解説する。哲学にまで触れている。 (岩波新書)


動画「Ams Meiji University」

坂道を上って行くボールなど、不思議な映像とその種明かしの動画が面白い。なぜ?と考えながら映像を見ると楽しめるだろう。現象数理学が学べる明治大学先端数理科学研究科現象数理学専攻の動画配信サイト。


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