ナノ材料化学

ゆるく結合した分子集団「超分子集合体」を材料に応用


伊原博隆先生

熊本大学 大学院先端科学研究部

どんなことを研究していますか?

多くの分子が共有結合によって強く結びついているのに対して、それ以外のゆるい結合によって結びついている分子集団を、超分子集合体と呼んでいます。この現象は、原子や分子が規則的に並ぶことによって、もともとの原子や分子にはない機能が現れるためです。

生命はこのような超分子現象が、さらに複雑に組織化されることで成り立っています。生命体が営む究極の化学に学び、シンプルな分子を巧みに集積させて、新たな超分子を作ることで、光学材料、電子デバイス、生体材料、医用材料など、様々な分野に応用することができます

ナノ材料化学という研究分野でのカギは、原子や分子を規則的に配列させ、ナノサイズの構造体に超分子的な機能を発揮させることにあります。この重要な現象の一つに「自己組織化」による薄膜形成があります。

細胞膜は、この自己組織化によって形成された超薄膜の一種です。生命体はこのような自己組織化によって、超分子機能を持つ構造体を様々作りだし、多くの働きを生みだしています。

私たちの研究室では、生命現象における自己組織化と超分子の化学を手本にして、チューブ状、ラセン状、リボン状などの、ユニークな形状の自己組織化ナノファイバーの開発を行っています。ナノファイバーとは、極限まで細くした線維のことで、従来の線維にはなかった新しい物理的、化学的性質が生まれるため、これを応用した新素材の開発が可能になります。

光エネルギーを効率良く活用する「光マネージメント技術」

LED照明などによる人工の光は、その全エネルギーが有効に活用されているわけではありません。自然光(太陽光)を利用した植物の光合成でさえも、その一部が活用されているだけです。

そこで私たちは光の特性を調整し、有効活用する光マネージメント技術というものを追求しています。光エネルギーを高効率に活用する技術の一つである光マネージメントを用いて、光の質を変調するための様々な機能性薄膜や微粒子を作製しており、次世代型の光利用技術への応用を目指しています。

キルギスタンとバングラデシュからの来訪者をお迎えして(日本科学技術振興機構の「さくらサイエンスプラン」にて来日。中央が高藤誠教授、研究室の概要やスケジュールを説明)
キルギスタンとバングラデシュからの来訪者をお迎えして(日本科学技術振興機構の「さくらサイエンスプラン」にて来日。中央が高藤誠教授、研究室の概要やスケジュールを説明)
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→化学系

●主な職種は→研究職

●業務の特徴は→基礎研究、開発研究、実用化研究

分野はどう活かされる?

大学での教育研究者、企業での研究開発、企画開発、製産ライン管理、海外拠点での製産・マネージメント業務

先生の学部・学科はどんなとこ

・基礎研究から材料開発や応用研究までが可能

・有機材料、無機材料、ハイブリッド材料など、多彩な材料開発

・グローバル教育と国際共同研究の推進

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先生からひとこと

イノベーションは誰でもできる。身近なものに疑問を持ち、より良いものを目指す気持ちが大事。いずれ大きな課題が見つかり、世界に影響を与えるイノベーションに結びつく。

先生の研究に挑戦しよう!

【テーマ例】

光マネージメント材料の作製と応用・評価〜植物工場のための基礎研究