思春期学
監修:長谷川寿一、編集:笠井清登、藤井直敬、福田正人、長谷川眞理子(東京大学出版会)
思春期は身体的には比較的健康度が高い時期であり、これまでにあまり研究が進んできていませんでした。しかし、精神疾患の大半が思春期に発症することや、思春期が人間性を形成する重要なライフステージであることが改めて見直され、今注目されています。
この本では、人文社会科学と脳科学・医学の先生方が集結し、思春期の心身の発達について明らかにする「思春期学」を提唱されています。私はまさに、思春期の経験が成人期の社会性やストレス耐性に与える影響を知りたいと思っているので、とても勉強になりました。中高生の皆さんは、まさに思春期まっただ中で心身共に大きな変化を実感されていることと思いますので、興味深く読めるのではと思います。
幼少期の経験が、大人の「生きやすさ」にどう影響するのか
社会性や折れない心を育むのは?
幼少期のスキンシップや遊びが、社会性や折れない心を育むのに重要であると言われています。社会性や折れない心には大きな個人差があり、他者と関わる人間社会において「生きやすさ」や「生きづらさ」の原因となる性質の一つです。
これまでに、幼少期の経験が長い年月を経て成熟後の性格に影響を及ぼす詳細なメカニズムはほとんど分かっていません。私は幼少期の経験によって「生きやすさ」を獲得するメカニズムと、大人になってからでも「生きやすさ」を獲得することができるのかを明らかにし、この研究を社会に役立てたいと思っています。
オキシトシンの役割
大学の研究室で、今では愛情ホルモンとして広く知られる様になったオキシトシンの愛着における役割の研究に携わりました。オキシトシン受容体の遺伝子を持たないマウスを作製し、そのマウスの赤ちゃんでは母親を呼ぶ声がほとんど表れず、大人になってからも子に対する母性行動、マウス同士の攻撃行動、見知った相手を記憶する能力などに異常があることを見出しました。
幼少期と大人のどちらにおいてもオキシトシンが愛着に関わることが分かったので、オキシトシンが幼少期の経験と大人になってからの性質をつなぐ因子かもしれないと考えました。
愛着行動による神経や行動の変化を明らかに
現在は、ラットやマウスを対象として、幼少期の愛着行動による大人での脳内の神経細胞や神経回路の活動変化や、幼少期に神経活動を操作した時の大人での行動変化を明らかにすることで、大人の社会性や折れない心がどの様に育まれるのか、分子・細胞レベルで明らかにすることにチャレンジしています。
私は動物が元々好きだったので沢山動物にふれ合える農学部に入りました。今は、ラットが遊んでいるのを見ているのもとても楽しく幸せなので、遊びの研究を対象にしています。また、学生の時に「よく毛繕いをされたラットは、成長後のストレス反応が低くなる」という論文を読み、小さい頃の体験が長い時間を経て大人になってからの性質に影響するという現象自体に興味を持ち、現在のテーマを進めています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 医学か獣医学 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 吹奏楽・交響楽、セツルメント |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 企業の野球部の応援、大学の野球部の試合のウグイス嬢 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? スポーツ観戦 |