植物ホルモン「オーキシン」の挙動から、植物の進化の謎を解く
植物の発生・形態形成に重要なオーキシン
オーキシンは、植物の発生・形態形成を制御する重要なホルモンです。植物の多様な形態形成を支える分子基盤として働くホルモンであり、農業・園芸分野でも広く利用されています。
これまでにオーキシンは、組織中を一方向に極性輸送されることが知られています。また、その方向は、オーキシン排出トランスポーターPINが、細胞の特定領域に偏在することで規定されることが示されています。
PINタンパク質偏在のメカニズムとは
オーキシン極性輸送はダーウィン親子によって報告された現象です。この現象の発見自体は古いものですが、極性輸送を制御する分子実態であるPINタンパク質が、実際にどのようにして偏在するかについては未だ明らかにされていません。
そこで私は現在、PINの偏在を規定する仕組みについて研究を行っています。これまでの他研究チームの研究から、PINは細胞膜から細胞内に恒常的にエンドサイトースされており、その後、細胞の特定部位にリサイクルされ続けることで、PINの偏在が維持されるとの仮説が提示されています。PINは発生過程や光・重力応答に際し、局在を変化させますが、本仮説は、このようなPINの動的な局在変化を説明可能なため、広く受け入れられてきました。
一方で私は、PINは、通常状態ではエンドサイトーシスされず、むしろ細胞膜中で安定に、静的に偏在することを発見しました。また、光・重力の刺激が来ると、この静的な局在は解除され、エンドサイトーシスが盛んに起こることを発見しました。現在、私はこれらの局在様式がどのようにして切り替えられるのかについて研究を行っています。
多様な植物種のオーキシン輸送システムを比較
また、近年、ゲノム解読が進み、様々な生物種の間で遺伝子の配列や機能を比較解析可能になっています。これにより現代の生物学は、生物の進化を分子レベルの現象として理解可能になっています。
そこで現在私は、藻類、コケ植物、シダ植物、被子植物など様々な植物種におけるオーキシンの輸送システムについても研究を行っています。多様な植物の解析から得られた知見を比較解析することで、オーキシン極性輸送システムがどのような過程を経て、進化してきたのかを明らかにしたいと思っています。そして、その知見をもとに、地球上の多様な形態の植物がどのようにして進化してきたのかを明らかにしたいと思い、研究を行っています。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
◆主な業種
(1) 薬剤・医薬品
(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(3) 農業、林業、水産業
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
大学教員だけでなく、製薬会社、食品会社、農薬会社で研究職をしていたりします。また、種苗会社で働く方や、国家公務員になる方、SEなど、様々な業界にわたります。
研究活動においては、実験技術だけでなく、論理的思考能力、批判的思考、文章作成能力、プレゼン能力など、様々な能力を育むことができます。そのため、アカデミアに限らず、社会に出たあと、どのような職種で働く際にも活かすことができます。
北海道大学理学部生物学科は、多様な研究分野の教員を構成員としていることが特色です。他の旧帝国大学などでは特定の研究分野に偏っていたりしますが、北海道大学は、系統分類学・博物学から、最先端の分子生物学の研究、さらには生態学といった幅広い研究が行われていることが特色です。
また、北海道大学は、大学入学時点では学部を決める必要はなく、入学後、幅広い教養を学んだのちに、学部を選択できることも特色です。焦らずにじっくり将来の方向性を考えることができます。
ゼニゴケの葉状体には杯状体と呼ばれる組織が分化し、その内部には無性生殖によって生じる無性芽が形成されます。この無性芽は土の上に置かれると、明確な表裏(専門用語的にはそれぞれ背側、腹側)の組織を分化させます。裏側(腹側)には、仮根とよばれる根毛様の組織を分化させ、土に接着するのに対し、表側(背側)は緑色の光合成を行う組織を分化させます。
ゼニゴケ無性芽は、土の上に置かれた後、何らかの情報をもとに表裏の組織を分化させると考えられますが、どのようなしくみでこの制御がなされているか調べましょう。なお、この際には、植物ホルモンや、光、重力のシグナルに注目しましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 動物の行動学や脳の活動について学びたいです。植物とは異なる振る舞いをする動物に関する研究も行いたいです。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ベルギーです。3年ほど留学していたのですが、研究レベルが高いだけでなく、町中でも英語が通じるため、問題なく生活ができます。また、食事もおいしいいです。日本と比べ、比較的余裕のある生活が期待できることも理由の一つです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? テニス |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子育て |