細胞生物学

記憶のメカニズム

実験を繰り返し10年 記憶が長期化する仕組みが見えてきた!


上田(石原)奈津実先生

東邦大学 理学部 生物分子科学科

出会いの一冊

パラサイト・イヴ

瀬名秀明(新潮文庫)

私の研究は細胞小器官の機能に焦点をあてたものですが、この本では、細胞小器官の一つであるミトコンドリアが話のキーとなります。

25年以上前のSFですが、その当時の最新の科学の知見も盛り込まれており、丁寧にわかりやすくミトコンドリアの機能が記載されているので細胞小器官に興味を持つきっかけになるかかもしれません。

また、研究室の日常が描かれているため、研究者の生活スタイルが垣間見られるところもおススメです。

こんな研究で世界を変えよう!

実験を繰り返し10年 記憶が長期化する仕組みが見えてきた!

祖母の認知症がきっかけに

皆さんの周囲には認知症の症状を示す方はいらっしゃいますか。

私の身近では、大学1年の時に祖母が認知症を患いました。病気の多くが医学書を開くと仕組みが書かれていて、一定の理解ができる一方で、認知症に関しては知見が少なく、日に日に祖母と会話が噛み合わなくなり、私は「一度獲得された記憶であるにもかかわらず、どうして忘れてしまうのだろうか?」と強い疑問を抱きました。私が現在の研究を開始したきっかけです。

ほぼ未開拓だった忘却の研究

学生時代にこの疑問を解こうとしましたが、そもそも研究活動に従事したことのない状態で、やり方もわかりません。スポーツでも音楽でも、研究もそうですが、初心者が我流で何かをしようとしたら、ひっちゃかめっちゃかです。博士取得まで、約10年下積み時代を過ごし、研究の「型」をみっちりご指導頂きました。

また、忘却に関してほとんど研究がなされておらず、記憶が定着する機構そのものも明確に理解されていないため、換言すれば記憶が長期間持続する分子機構を解明することで、忘却時の脳内での変化が明らかになる可能性があると考えるようになりました。

健康寿命の延長に貢献したい

学位取得後には、周囲の先生方のサポートも得ることができ、私たちの記憶が長期間持続するしくみの研究を開始しました。

当たり前ですが、今までわかっていないことが、数か月、数年で解けるわけもなく、ひたすら実験を積み重ね、結果から考察をしながら、地道に実験を繰り返すこと約10年、やっと今、強い刺激が脳内に入ると記憶が長期化する、分子・細胞メカニズムが見えてきました。

この研究をさらに発展させ、健康寿命を延ばす社会に貢献していきたいと考えています。また、これはゴールではありません。今は全く新しい世界を切り開くため、地道に地盤固めをしています。こちらに関しては、またの機会にご紹介できると嬉しいです。

顕微鏡でマウスの脳内の細胞(ニューロン)を観察しています。
顕微鏡でマウスの脳内の細胞(ニューロン)を観察しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「刺激依存的な細胞骨格・オルガネラ複合体の局在変化による生理機能発現」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
マウスの脳切片を作製しています。
マウスの脳切片を作製しています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 病院・医療

(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(3) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) その他医療系専門職(臨床検査技師・理学療法士等)

(3) 中学校・高校教員など

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

東邦大学理学部生物分子科学科は、生物学・化学と医学をつなげる分野横断型の学科という点て国内でもユニークな学科です。私たちの体の中で起こっている現象を分子レベルで理解して、それを化学の力で操り、疾患の治療戦略に繋ぐという点で、研究成果を医療応用するという強い意気込みがあります。

自らの研究分野を「最高」と胸を張る研究者が揃っていて、お互いの分野をリスペクトして盛り上げていこうとする雰囲気も素敵です。

オリジナリティーの高い、唯一無二の研究を目指して日々取り組んでいます。当日集合できた研究室メンバーと撮影しました。
オリジナリティーの高い、唯一無二の研究を目指して日々取り組んでいます。当日集合できた研究室メンバーと撮影しました。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

神の系譜(1) 竜の封印

西風隆介(トクマ・ノベルズ)

この本は神社仏閣の成り立ちを独自の視点で語る一風変わったミステリーです。作者は理系出身なため、ロジックを積み上げるストーリー展開で、理系の学生でも歴史に興味を持てると思います。私が高校時代暗記科目と思っていた歴史に興味を持ったきっかけの本です。

余談ですが、研究者の夫もこの作者が好きなため、シリーズでキーとなるお寺のご開帳の日に入籍しました。当日は、偶然作者が参拝しており、サインも頂きました。これがきっかけで著名人に会うたびに、サインを収集しています。


QED 百人一首の呪

高田崇史(講談社文庫)

色々な薬学知識と、歴史の知識が渾然一体となって話が進みます。この作者は薬学部出身であるため、論理的に話を構築しているので、歴史を理系の観点から捉える面白さがわかるかもしれません。

この本がキッカケで、神社仏閣を訪問するようになりました。この著者のサインもオフ会で頂いたほど、はまっています。


千里眼

松岡圭祐(角川文庫)

息もつかせぬ展開で脳医学や心理学、表情観察法などの豆知識が散りばめられていている作品です。

ちなみに、15年くらい前のことですが、『千里眼』の舞台となる東京湾観音で作者のサインも頂き、作者のHPで「脳神経の研究者を目指す学生にも会いました」と当日の様子が書かれていました。小説家と研究者は現時点で世の中に存在しない価値や概念を発表するという点で通じるものがあるのかもしれません。

一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

-真天地開闢集団-ジグザグ

Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

ボードゲーム(『カタン』)。研究者仲間で楽しみます。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

オリジナリティーの高い建築、神社仏閣、一風変わった場所訪問と食べ歩き。

Q4.好きな言葉は?

「為せば成る」「やまない雨はない」「有言実行」


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