仮想惑星をコンピュータ中に作り、惑星大気現象を解き明かす
流体力学の物理法則
日々の天気をもたらす風、すなわち大気の運動は、流体力学の物理法則に従っています。ただし、地球は自転していて、大気は上空ほど薄くなっています。こうした自転や成層の影響を強く受ける場合の流体力学は、特別に地球流体力学と呼ばれます。
地球とは異なる金星や火星の大気現象
地球流体力学は大気の運動を理解するのにとても役立ちますが、これまでは地球大気で見られる現象を中心に発展してきました。ところが、近年の惑星探査によって金星や火星で、地球では見られない特徴的な大気現象が見つかりました。
例えば、金星大気の巨大な筋状や弓状の構造、火星大気の地表付近で無数に発達する小規模対流などです。こうした惑星大気現象は、これまでの地球流体力学では予想されてきませんでした。
新たな学問「惑星流体力学」の構築を目指す
そこで、私たちはこうした惑星大気現象の流体力学を解明し、新たに「惑星流体力学」を構築しようと研究を始めました。大気の運動は、惑星の持つ様々な特徴の影響を受けます。例えば、惑星の大きさ、重力の強さ、自転速度、大気の組成や密度、太陽光の強さなどです。
ゆえに、惑星大気の運動を包括的に理解するためには、金星や火星などの実在の惑星だけを考えるのではなく、例えば「大きさが半分の金星」など、仮想的な惑星も考えることが重要です。私たちは、そのような仮想的な惑星をコンピュータの中にたくさん作りだし、そこで実現する大気運動を分析し解明することで「惑星流体力学」の構築を目指しています。
私は中学・高校時代から気象に興味があったわけではありません。大学に進学して様々な講義や実習を受ける中で、地球惑星科学の入門的な講義で登場した大気の流体シミュレーションの動画に衝撃を受けました。
コンピュータで再現された流体運動の滑らかさや、気温や気圧などを大きさに応じて色づけしたときの鮮やかさに、私は魅了されました。これがきっかけで気象学の研究室を志望し、さらにそこから惑星大気の面白さに出会いました。
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) コンピュータ、情報通信機器
(3) ソフトウエア、情報システム開発
◆主な職種
(1) システムエンジニア
(2) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア
(3) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
気象学の研究室ですので、学生は気象の専門知識を身につけます。それを活かして気象庁に就職し、活躍している卒業生が多いです。博士課程まで進学した学生の中には、JAXAなどで宇宙関連の仕事をしている人もいます。
また、コンピュータを駆使して研究をすることが多く、コンピュータに関する専門知識や技術も身につけます。それらを活かしてコンピュータ関連やシステムエンジニアの職に就き、活躍している卒業生も多くいます。
地球の気象学の研究室は日本中に沢山ありますが、惑星気象学を専門にしている研究室はわずかしかありません。そのうちの1つが神戸大学にあります。私たちは、コンピュータの中にプログラムで様々な惑星を再現し、その気象や気候を研究しています。
家庭用のパソコンを使うこともあれば、世界屈指のスーパーコンピュータ「富岳」を使うこともあります。私たちは最先端のコンピュータ技術を駆使して、未知の惑星気象に挑んでいます。
大気の運動のシミュレーションを体験してみましょう。「地球流体電脳倶楽部」という名のもとに、全国の関係する研究者が集まり、開発している数値モデルや解析プログラムを公開しています(https://www.gfd-dennou.org)。インストールガイドやチュートリアルもあるので、これらを利用して、自分のパソコンでシミュレーションを行い、大気の振る舞いを観察してみましょう。
Q1.感動した/印象に残っている映画は? 『マトリックス』、『オデッセイ』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 |
|
Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 『スーパーロボット大戦』シリーズ、『Civilization』シリーズ、『Horizon』シリーズ |
|
Q3.大学時代の部活・サークルは? アーチェリー部 |
|
Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? プロ野球。家族の影響で最近よくテレビ観戦しています。 |