気象・海洋物理・陸水学

惑星大気

仮想惑星をコンピュータ中に作り、惑星大気現象を解き明かす


樫村博基先生

神戸大学 理学部 惑星学科(理学研究科 惑星学専攻)

出会いの一冊

惑星気象学入門 金星に吹く風の謎

松田佳久(岩波科学ライブラリー)

日本の惑星気象学の大家である松田佳久先生が、金星、地球、火星、木星や土星の衛星であるタイタンなどの気象を一般向けに解説した新書です。様々な観測データを示しながら、平易な文章でそれぞれの惑星の気象について紹介しています。

火星の全球砂嵐や金星のスーパーローテーションなど、地球以外の惑星では、地球の常識では考えられない極端な現象が起きています。そうした非常識な世界を楽しむとともに、その解明に挑戦していく醍醐味を感じ取ってもらいたいです。

こんな研究で世界を変えよう!

仮想惑星をコンピュータ中に作り、惑星大気現象を解き明かす

流体力学の物理法則

日々の天気をもたらす風、すなわち大気の運動は、流体力学の物理法則に従っています。ただし、地球は自転していて、大気は上空ほど薄くなっています。こうした自転や成層の影響を強く受ける場合の流体力学は、特別に地球流体力学と呼ばれます。

地球とは異なる金星や火星の大気現象

地球流体力学は大気の運動を理解するのにとても役立ちますが、これまでは地球大気で見られる現象を中心に発展してきました。ところが、近年の惑星探査によって金星や火星で、地球では見られない特徴的な大気現象が見つかりました。

例えば、金星大気の巨大な筋状や弓状の構造、火星大気の地表付近で無数に発達する小規模対流などです。こうした惑星大気現象は、これまでの地球流体力学では予想されてきませんでした。

新たな学問「惑星流体力学」の構築を目指す

そこで、私たちはこうした惑星大気現象の流体力学を解明し、新たに「惑星流体力学」を構築しようと研究を始めました。大気の運動は、惑星の持つ様々な特徴の影響を受けます。例えば、惑星の大きさ、重力の強さ、自転速度、大気の組成や密度、太陽光の強さなどです。

ゆえに、惑星大気の運動を包括的に理解するためには、金星や火星などの実在の惑星だけを考えるのではなく、例えば「大きさが半分の金星」など、仮想的な惑星も考えることが重要です。私たちは、そのような仮想的な惑星をコンピュータの中にたくさん作りだし、そこで実現する大気運動を分析し解明することで「惑星流体力学」の構築を目指しています。

大学での普段の研究風景です。コンピュータの中でシミュレーションした惑星大気の膨大な数値データを解析して、結果を図にして、情報を引き出しています。
大学での普段の研究風景です。コンピュータの中でシミュレーションした惑星大気の膨大な数値データを解析して、結果を図にして、情報を引き出しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は中学・高校時代から気象に興味があったわけではありません。大学に進学して様々な講義や実習を受ける中で、地球惑星科学の入門的な講義で登場した大気の流体シミュレーションの動画に衝撃を受けました。

コンピュータで再現された流体運動の滑らかさや、気温や気圧などを大きさに応じて色づけしたときの鮮やかさに、私は魅了されました。これがきっかけで気象学の研究室を志望し、さらにそこから惑星大気の面白さに出会いました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「「地球」流体力学から惑星流体力学へ」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究会での発表の様子です。研究成果を披露し、他の研究者と議論を交わすことで、より良い研究が生まれます。
研究会での発表の様子です。研究成果を披露し、他の研究者と議論を交わすことで、より良い研究が生まれます。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(2) コンピュータ、情報通信機器

(3) ソフトウエア、情報システム開発

◆主な職種

(1) システムエンジニア

(2) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア

(3) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

気象学の研究室ですので、学生は気象の専門知識を身につけます。それを活かして気象庁に就職し、活躍している卒業生が多いです。博士課程まで進学した学生の中には、JAXAなどで宇宙関連の仕事をしている人もいます。

また、コンピュータを駆使して研究をすることが多く、コンピュータに関する専門知識や技術も身につけます。それらを活かしてコンピュータ関連やシステムエンジニアの職に就き、活躍している卒業生も多くいます。

先生の学部・学科は?

地球の気象学の研究室は日本中に沢山ありますが、惑星気象学を専門にしている研究室はわずかしかありません。そのうちの1つが神戸大学にあります。私たちは、コンピュータの中にプログラムで様々な惑星を再現し、その気象や気候を研究しています。

家庭用のパソコンを使うこともあれば、世界屈指のスーパーコンピュータ「富岳」を使うこともあります。私たちは最先端のコンピュータ技術を駆使して、未知の惑星気象に挑んでいます。

サーバー室に設置している研究用コンピュータです。何百テラバイト(=何十万ギガバイト)にもなる大量のデータを保存するために、たくさんのハードディスクを備えた特殊なコンピュータを用いています。
サーバー室に設置している研究用コンピュータです。何百テラバイト(=何十万ギガバイト)にもなる大量のデータを保存するために、たくさんのハードディスクを備えた特殊なコンピュータを用いています。
先生の研究に挑戦しよう!

大気の運動のシミュレーションを体験してみましょう。「地球流体電脳倶楽部」という名のもとに、全国の関係する研究者が集まり、開発している数値モデルや解析プログラムを公開しています(https://www.gfd-dennou.org)。インストールガイドやチュートリアルもあるので、これらを利用して、自分のパソコンでシミュレーションを行い、大気の振る舞いを観察してみましょう。

中高生におすすめ

空想科学読本シリーズ

柳田理科雄(KADOKAWA)

マンガやアニメや特撮のキャラクターや出来事を、物理を中心とした科学の観点から分析し、面白い事実を明らかするという内容です。

基本的な物理法則や科学の考え方や応用を親しみやすい題材を用いて記述しており、マンガやアニメと理科に興味をもっている人にオススメします。私も中高生の頃に、何度も読んで楽しみながら、物理学や科学に親しむことができました。

シリーズ本のURL:https://www.kusokagaku.co.jp/books-cat/basic


Dr. STONE

原作:稲垣理一郎、作画:Boichi(ジャンプコミックス)

ある出来事がきっかけで現代文明が滅び、石器時代のようになった世界で、物理や化学、工学の知識が豊富な主人公が、それらを活かして問題を解決したり、科学文明の復興を目指す物語です。

マンガ原作でアニメ化されています。物語を楽しみながら、科学の面白さとそれを用いた文明の偉大さを感じ取れる作品だと思います。


文章は接続詞で決まる

石黒圭(光文社新書)

大学では、自分で論理的な文章を書くことが多くなります。なので、理系学部を志す人にも国語は大切です。本書は接続詞に焦点を当てて、論理的な文章、読みやすくわかりやすい文章の書き方を紹介しています。

本書の内容は文章を書くときのみならず、論理的な思考を行う際にも有益だと思います。

一問一答
Q1.感動した/印象に残っている映画は?

『マトリックス』、『オデッセイ』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

『スーパーロボット大戦』シリーズ、『Civilization』シリーズ、『Horizon』シリーズ

Q3.大学時代の部活・サークルは?

アーチェリー部

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

プロ野球。家族の影響で最近よくテレビ観戦しています。


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ