「脳・こころ」ストレスが、なぜ動脈硬化疾患を引き起こすのか
循環器内科医として全力で臨床に取り組んだ3年間
神戸大学医学部を卒業してから、内科・循環器内科で研鑽を積みました。全力で臨床に取り組むと、どんな疾患にも対応できる基礎能力が身につくと共に、その時の医学では解決できない課題・問題点が見えるようになってきます。
医学部学生に繰り返しお話しますが「医学は永遠に未完成である」。経験則に基づいて行われていることも多く「なぜそうなる?」「なぜそうする?」という質問に答えがないことが多数残っています。
動脈硬化による病気は、きちんと治療をしていっても何度も繰り返す患者さんがいらっしゃいます。そのような患者さんは、なぜ病気を繰り返すのか? 答えのない疑問が膨らんでいました。
研究の世界へ。そして新しい技術「質量分析」との出会い
医者になってから4年目に、大学院に入学して、動脈硬化の原因となる炎症について研究を始めました。そして日本人の田中耕一先生もノーベル賞を受賞して話題となっていた新しい技術「質量分析」と出会います。
「質量分析」を用いた代謝物解析:メタボローム
「質量分析」を用いて患者さんの血液を解析すると、さまざまな代謝物:メタボロームの変動が見つかります。これらのメタボロームの変化が、病気の原因となったり、病気の診断技術に応用できるのではないかと考えるようになりました。
メタボローム技術を用いた疫学研究・分子疫学研究へ
現在は、このメタボローム技術を、病気の早期発見・早期治療に用いたいと考えています。現在注目しているのは「脳・こころ」ストレスが、なぜ動脈硬化疾患を引き起こすのか?という疑問です。カラダがストレスを受けると、血液中の生体保護に関わる代謝物が低下し、病気を引き起こしている可能性が見えてきて、ストレスが原因となる病気を予防するための研究を続けています。
「「脳・こころ」ストレスと動脈硬化疾患:脂質代謝物解析が解き明かすそのメカニズム」