物理学を生物に応用、生物物理学とは?
元々は物理学で輸送現象を研究
私は学生の頃、考えれば解くことができる物理学が好きで、電流(電子の移動)や熱伝導(熱の移動)などの輸送現象の物理を学んでいました。覚えることが多すぎて生物学なんて全然好きではなかったのですが、そんなある時、友達の生物学者が、「物質輸送って細胞の中にもあるじゃない」と教えてくれました。
物理学で神経細胞を、さらには病気を調べたい
生きるために、エネルギーや栄養は細胞の隅々に輸送されています。
例えば、私たちの体と脳を結ぶ1メートルもある運動神経の中では、神経伝達物質が輸送されています。アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSなどの神経疾患では物質輸送障害が出てしまいます。
細胞の中ではどういうメカニズムで物質が輸送されているんだろうと考え、私は物理学を利用して細胞の中の輸送現象を調べることをヒラメキました。生物物理学=生物を対象とした物理学です。とても新しいでしょう。
神経細胞を調べれば、医学の解明にも役立つと思っています。物理学を用いた解析をAI(人工知能)で自動化して、たくさんの病気を調べたいですね。
科目の境界にこそ最先端研究が生まれる
高校生のみなさんにとって物理、化学、生物など科目ははっきり分かれていますよね。
研究の現場では意外に思われるかもしれませんが、科目の境界が曖昧です。生物なのに物理を必要としたり、生物実験には化学が必要だったり、医学は工学を必要としていたり。研究では科目の境界に最先端研究があることが多いのです。
将来何を学ぶか迷っている人は、ぜひ複数科目の境界に興味を持ってみてください。
→先生のフィールド[情報計測] 平成 30 年度採択課題ではこんな 研究テーマも動いている!「生物物理・化学物理・ソフトマターの物理」が 学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)
「17.化学・化学工学」の「67.物理化学、分子デバイス化学(液晶、光触媒等)」
7 seeds
田村由美(小学館)
巨大隕石の衝突で人類滅亡を防ぐための政府プロジェクト 7seeds。それは若く健康な人間を選んで冷凍保存し、未来に自動解凍を行い放出するというものです。文明が滅びた後の地球で目覚めた皆さんと同じくらいの年齢の40人が、壮絶なサバイバル生活を乗り越え、愛・友情・希望を見つけて成長していく物語です。医学、生物学、動植物学、建築学、音楽って学んでおくと便利だな、学問って生きるために大事なんだなあ。