第2回 電解質膜の種類で用途も変わる。燃料電池自動車用から地球上では非実用の宇宙開発用まで
燃料電池は、電解質膜に何を使うかで、いくつかに分類されます。動作する温度も電解質膜の種類で、変化します。
例えば、イオン交換膜を使う「固体高分子形」の燃料電池は、100度以下で動作します。イオン交換膜は化学系が扱う材料ですが、研究が非常に進んでいます。燃料電池自動車が今年 (2014年)の年末くらいに発売になると思いますが、その燃料電池はおそらく固体高分子形の燃料電池が使われます。
次に「りん酸形」や「溶融炭酸塩形」の燃料電池。これは1960年くらいから、宇宙開発用としてずっと作られていますが、地球上で使うのは極めて難しいので、非実用的であるとされています。
もう一つは「固体酸化物形」の燃料電池。800度以上で動作する燃料電池です。これは、誘電体やコンデンサーの材料であるジルコニア(安定化ジルコニア)を電解質として使っていることから、物理の分野で非常によく研究されています。
材料はバリウムとセリウムと酸素の化合物
燃料電池の材料としてよく使われるのは、バリウムとセリウムと酸素の化合物、BaCeO3です。これ自身は絶縁体で全く電気を通しませんが、あえて違う元素を入れて、不純物の半導体にします。小さな不純物が入ることで、結晶中に欠陥ができ、水分子の酸素が入り込んで、H+というプロトンを生成します。結晶体に自由電子のような形で存在するH+が、温度を上げることによって、結晶中を移動し、電気を作る源になります。
燃料電池の製造工程
電解質膜は、次のような工程で作られます。原料を組み合わせ「混合」し、ヒーターで焼いて「乾燥」します。それをプレスして、高温で「焼結」し、セラミックスを作ります。できたセラミックスの対向する場所に、電解質膜を付けるための基板をセットし、そこに電場をかけてアルゴンガスを充満させると、アルゴン原子がターゲットであるセラミックスに当たって、原子・分子が励起され、基板上に堆積して、薄い膜を形成します。
電解質膜の表面は10億分の1メートル 、nm(ナノメートル)単位の小さな粒の集まりです。粒の大きさは、だいたい20nmくらいのオーダーです。作る温度や作り方によって、電解質膜の形状は微妙に変わります。