第3回 よりよい燃料電池を求めて ~膨大な数値データ解析に数学は必要
電気伝導度を計測する
電解質膜が完成したら、どれだけの電気を流すのか「電気伝導度」で評価します。電気伝導度や電気抵抗の測定は、試料に電流(I)を流して、その間の電圧(V)を測ってやるというのが一般的です。
燃料電池はイオンを透過させなければいけませんから、実際の計測は、水素ガスを導入して行ないます。
半導体は、温度を上げれば上げるほど、電気は流しやすくなる
燃料電池というのは常温ではなく、800度、900度という高温で作動します。そこで、電気伝導や電気抵抗が、温度によってどのように変わるかを知っておく必要があります。
金属の場合、低温だと結晶中の自由電子が自由に動き回れるので、電流(電気)が流れやすい。つまり、「電気抵抗」が小さい=「電気伝導率」が大きくなります。しかし、温度を上げると、中にあるイオンや原子・分子が熱エネルギーをもらって、格子振動が起こります。自由電子が動こうとしても、振動しているイオン等にぶつかってしまって、なかなか移動できません、つまり、「電気抵抗」が大きくなる=「電気伝導度」が小さくります。
一方、燃料電池でよく使われる半導体は、金属に比べると電気抵抗はやや大きいのですが、温度を上げていくと、電子の結合がはずれ、自由電子となって結晶中を動き回ります。金属と逆に、半導体は、温度を上げれば上げるほど、電気は流しやすくなる=電気伝導度が大きくなります。
発電能力の測定
どれだけの発電能力を持っているのかという評価も行ないます。電解質膜を電極で挟んで、水素ガスや酸素ガス、空気などを流し、温度に対してどれくらいの電圧があるのか、どれくらいの電気を作りだすのかグラフを作っていきます。
以上が、実際の研究で行なっていることです。
みなさんがもし、大学で燃料電池の研究を行なうとしたら、高いイオン伝導性を持つ物質の発見とか、発電効率を上げるための新しい電極やシステムの開発等が、大きなテーマになると思います。
理工系を目指す人に
大学で扱う物理では、機械系の学科でも電気系の学科でも、数学が非常に重要になります。特に、微分積分学、解析学、線形代数学はとてもよく使われます。
研究の場では、膨大な数値データを取り扱うことも非常に多くなります。数学的に処理して、例えば、どのくらい発電効率が上がったとか、もっと良くするためにどうしたらいいのかということを考えていくわけです。数学は理系のどの分野に進むにせよとても重要です。
そしてもう一つ。英語の力をつけてください。最先端の研究に関する文献というのは、全てが英語です。卒業研究や大学院に進むと、英語で報告書を書いたり、発表したりすることも必須となります。英語力が理工系にも要求されるということを覚えておいてください。
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