第1回 太陽光発電に比べ格段に発電効率のよい燃料電池
今日は、大学1年生を対象とした講義内容を少し易しくしてお話しします。テーマは燃料電池の発電システム。応用物理の領域になります。
私たちが使っている電気は、主に原子力発電と火力発電によって作られています。 およそ30年前の1980年には、原子力、火力、それに加えて水力によって、電気が作られていました。その後2000年から2009年までは、原子力と火力で全体の約80%となっています。残りは水力もふくめた再生可能エネルギーです。東日本大震災が起こるまでは、全体の5割以上を原子力に移行しようという計画がありましたが、現在では、原子力を縮小して、自然エネルギーを使ったほうがいいのではないかということで、いろいろな自然エネルギーの有効利用が考えられています。
しかし、日本の風土を考えると、風力発電や太陽光発電は、なかなか難しい。自然エネルギーによる発電だけではなく、燃料電池発電とか、リチウム電池といったものを併用していくのが、現実的であろうというのが、現在の流れです。
発電効率は80% ~燃料電池の特徴としくみ
名前で誤解を受けやすいのですが、燃料電池は、電気を蓄えるのではなくて、電気を作るための装置、つまり「電気化学デバイス」です。その特徴は非常に効率が良いことです。入れた燃料を100とすると、発電の効率はだいたい80%程度になります。太陽光発電の場合、10%から20%程度しかありません。他にも、クリーンで、いわゆる環境特性に優れ、静かであるというも燃料電池の特徴です。
燃料電池のしくみについては、中学か高校の授業でも習っているのではないかと思います。燃料電池の構造は、「電解質膜」というイオンを透過させる膜を、アノード(燃料極)・カソード(空気極)と呼ばれる二つの電極ではさむという非常にシンプルなものです。
アノード(燃料極)に水素もしくは水を吸着させると、電子とイオンとに分離し、イオンは電解質膜中を通り、電子は導線を通っていく。イオンは、電解質膜を通過した後、空気中の酸素と反応して、水として排出されます。この過程で、電気と熱が発生します。
つないで大きな電流を生み出す
燃料電池は基本的に、電解質膜をアノードもしくはカソードと呼ばれる二つの電極ではさんで作るんですが、それだけでは使い物になりません。セパレーターと 呼ばれる金型ではさみ、耐久性を上げます。この金型には溝があり、一方の溝から水素燃料を、もう一方の溝から酸素ガスを供給するという形になっています。 燃料電池単体では、大きな電気を作りだすことはできません。セパレーターを直列接続でつないで、大きな電流・電圧を発生させます。これをスタック構造といいます。
こうしたスタック構造の燃料電池は、既にエネファームという名称で、家庭用の燃料電池として使われています。反応過程で生じる200度以上の熱は、給湯や暖房の熱源として再利用され、非常に効率的なシステムとなっています。
燃料電池という選択 ―200年前の夢を叶えたエネファームの物語
永田裕二(ダイヤモンド社)
燃料電池を使って、家で電気とお湯を同時につくる。そんな200年前にはSFで描かれた“無限エネルギー”の夢は、今ではエネファームの技術として現実化されている。東芝燃料電池システム株式会社の取締役技術統括責任者が、エネファームの技術が商用化されるまでの何年にも及ぶ技術開発を語る。