第15回 人間がコンピュータに支配される時代はやってきますか?~高校生との対話(2)
高校生 人工知能が脳を超え人間の仕事を奪われた社会で、人間は何をして生きていけばいいのでしょうか。
濱上先生 みなさんに考えていただきたいことがあります。人類はほぼ100年周期で大きな革命を経験してきたんです。17世紀に農業革命、18~19世紀に産業革命が起こりました。次の20世紀は情報革命の世紀です。その次の21世紀の大革命は「知能革命」でしょう。その先にどんな大革命が起きるのか、まだ想像もつきません。それぞれの大革命の時にも、失われた仕事はたくさんあったはずです。でもそれで人間は不幸になったでしょうか。そうじゃないですね。人間はさらに人間にしかできないことを見つけて、そこに新しい価値を見つけていきます。
パーソナルコンピュータという概念を初めて作ったアラン・ケイという人がいます。アメリカの計算機科学者でありジャズ演奏家でもあった人ですが、彼は「未来を予測する最善の方法は、自ら創りだすことである」と言っています。いろいろ将来の心配事を憂え、どうすればいいんだろうかと不安になったり、将来に供えたいという気持ちはわかるんですが、むしろ積極的に創っちゃおうというふうに考えてほしいですね。
アラン・ケイは「ものの見方はIQ80ポイントに匹敵する」とも言っています。どういうことかというと、視野を広げものの見方を増やすことは、自分のIQをこれまでより80ポイント引き上げることに等しいというんです。君たちにはいろんなものの見方ができるように視野を広げてほしい。特に人工知能という学問は、一応、工学分野ということになっているけれど、ここまで話したように、コンピュータもあれば数学も、社会学も生理学もある。いろんな分野が集まってできている分野ですから、いろんなものの見方ができます。ぜひ間口を広げて勉強してほしい。
Appleコンピュータの創始者、スティーブ・ジョブズは「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分が何が欲しいかわからない」と言っています。いろいろ将来を予測し心配するより、むしろ作って形にすることにチャレンジしてください。
高校生 人類がロボットとか人工知能に支配されることはありますか。
濱上先生 今日も同じ質問がたくさんあったし、マスコミが騒いでいるのも、人工知能が人間を支配するんじゃないかという心配ですね。個人的には最終的に大丈夫と思います。だってロボットよりも人間のほうが怖いから(笑い)。むしろ人間の(心の闇)のほうを心配したほうがいいと思いますね。