民事法学

世界の契約法

欠陥商品の責任は買う人に?グローバル時代の契約法


野澤正充先生

立教大学 法学部 法学科(法学研究科 民刑事法専攻)

出会いの一作品

レインメーカー(映画)

フランシス・フォード・コッポラ(監督)

司法試験に合格したばかりの主人公が、保険金の支払を不当に拒否して貧しい被保険者を死に至らしめた大手保険会社と、その代理人である大手法律事務所を相手に法廷で闘います。この映画では、訴訟社会であるアメリカの現実に加え、裁判の役割とその限界などが描かれています。雨のように金を稼ぐ弁護士(レインメーカー)を通して、正義とは何か、また、人はいかに生きるべきかなどを考えることができるでしょう。

こんな研究で世界を変えよう!

欠陥商品の責任は買う人に?グローバル時代の契約法

二千年前のローマでは、商品の欠陥は売主責任

商品を買って家で使用したところ、思わぬ欠陥があったとします。この場合に、買主は、売主に文句を言うでしょう。しかし、売主は、その欠陥について「自分には落ち度(過失)がない」と言うかもしれません。

今から2000年以上前のローマ法では、売主に落ち度があるか否かにかかわらず、買主は、その欠陥分の代金を安くさせたり(減額)、売買をなかったものとすること(解除)ができました。売主は、商品の品質に責任を持っていたからです。

イギリスでは買主に品質確認の義務がある

ところが、19世紀にいち早く産業革命を経たイギリスでは、売主は商品についての責任を負わず、買主が買う時に品質を調べなければならない、というルールが確立しました。

これによって、取引が迅速に行われるとともに、世界一の売主となった自国が有利になるからです。そしてこのルールは、アメリカにも伝えられ、国際取引ルールの基本的な考え方となります。

グローバルな取引が進み、各国が民法を改正

日本は、ローマ法と独仏の伝統に従い、売主が商品について責任を持つという考えを採ってきました。これに対して、上記のように英米では、買主が商品の品質を確認する義務を負っています。そうすると、現在では、世界中の商品を誰もが自由に買うことができるため、国によって法制度が異なり、商品に欠陥があった場合の対応に困ります。

そこで、2000年以降は、ローマ法の伝統と英米法とを融合する方向での契約法の統一が進み、各国の民法が改正されました。2020年4月1日に施行された新しい民法も、このような統一ルールを採用しています。法制度の歴史や背景を学んで、世界に目を向けましょう。

ラオスの民法典を制定した際の、ヴィエンチャンでの記念講演の写真です(2019年2月20日撮影)
ラオスの民法典を制定した際の、ヴィエンチャンでの記念講演の写真です(2019年2月20日撮影)
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「日仏における契約法のグローバル化と民法理論の変容に関する比較法的検討」

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パリ第2大学の法曹コースで私が講義をした後に、受講生と一緒に撮った写真です(2019年11月19日撮影)
パリ第2大学の法曹コースで私が講義をした後に、受講生と一緒に撮った写真です(2019年11月19日撮影)

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