欠陥商品の責任は買う人に?グローバル時代の契約法
二千年前のローマでは、商品の欠陥は売主責任
商品を買って家で使用したところ、思わぬ欠陥があったとします。この場合に、買主は、売主に文句を言うでしょう。しかし、売主は、その欠陥について「自分には落ち度(過失)がない」と言うかもしれません。
今から2000年以上前のローマ法では、売主に落ち度があるか否かにかかわらず、買主は、その欠陥分の代金を安くさせたり(減額)、売買をなかったものとすること(解除)ができました。売主は、商品の品質に責任を持っていたからです。
イギリスでは買主に品質確認の義務がある
ところが、19世紀にいち早く産業革命を経たイギリスでは、売主は商品についての責任を負わず、買主が買う時に品質を調べなければならない、というルールが確立しました。
これによって、取引が迅速に行われるとともに、世界一の売主となった自国が有利になるからです。そしてこのルールは、アメリカにも伝えられ、国際取引ルールの基本的な考え方となります。
グローバルな取引が進み、各国が民法を改正
日本は、ローマ法と独仏の伝統に従い、売主が商品について責任を持つという考えを採ってきました。これに対して、上記のように英米では、買主が商品の品質を確認する義務を負っています。そうすると、現在では、世界中の商品を誰もが自由に買うことができるため、国によって法制度が異なり、商品に欠陥があった場合の対応に困ります。
そこで、2000年以降は、ローマ法の伝統と英米法とを融合する方向での契約法の統一が進み、各国の民法が改正されました。2020年4月1日に施行された新しい民法も、このような統一ルールを採用しています。法制度の歴史や背景を学んで、世界に目を向けましょう。
「日仏における契約法のグローバル化と民法理論の変容に関する比較法的検討」