日本の焼酎のルーツは中国にあり!「小曲米酒」の製法研究
日本酒とは異なる焼酎の製法
“焼酎”は500年の歴史を持つ日本の伝統的なお酒ですが、焼酎の造り方は一体どこから生まれたのでしょうか。焼酎の造り方は独特で、米で造られた麹に水を加えて5日間発酵させます。次に主原料(芋焼酎であればサツマイモ)と水を加えて、これをさらに10日ほど発酵させます。最後にこのもろみを蒸留することで焼酎の出来上がりです。これは清酒の造り方とも違います。
一方、隣国の中国の伝統蒸留酒である“白酒”の造り方も個性的で、蒸した米や麦に発酵に必要な微生物が入った粉末を混ぜて固体状態で発酵させ、この固体状態のまま蒸留も行うことから、焼酎の造り方とは全然違います。
小曲米酒の産地、広東・広西は、沖縄・九州と近い
それでは最初の質問に戻り、焼酎の造り方はどこから生まれたのでしょうか。私はその秘密を解く鍵が、中国南部の希少なお酒“小曲米酒”にあると考えています。小曲米酒は、中国で市場規模が非常に小さいお酒です。しかし、私はこの小曲米酒が、米焼酎や泡盛と非常に似た造り方をされることに気付きました。
また地理的にも、小曲米酒の産地である広東・広西は、台湾を間にはさむ形で焼酎の産地である沖縄・九州と近い位置にあり、小曲米酒と焼酎のつながりを感じさせます。もちろん2つのお酒の造り方では違う部分もあります。この共通する部分と違う部分を研究することで、焼酎はどこから来たのか、そして日本国内でどのように発展したのかをわかることができると思っています。
「日本の蒸留酒製造技術の独自発展の起源を探る~中国「小曲米酒」との比較を通じて」
◆研究室に配属された時に話すこと
発酵食品は、人類の知恵と工夫、努力が詰まった食べ物です。しかしながら、必要によって生み出されたものでもあり、科学的な証明がないまま、あたかも一般的な技術として使われています。発酵食品や食物の人体内での代謝について、また人類の工夫と、自然が生み出した食物・微生物がどのように関わり合っているのかを理解することは、これからの科学技術の発展のために必要なことです。研究室の学生に初めにこういった話をして、発酵技術を学ぶよう導いています。
◆Facebook:https://www.facebook.com/ercfs
◆主な業職種
(1)食品・食料品・飲料品などの企業で、品質管理・評価、生産管理
(2)官庁、自治体、公的法人、国際機関等の職員
◆学んだことはどう生きる?
私たちの研究室の1期生卒業生のIさんは、鹿児島県内の焼酎メーカーに就職しました。Iさんは、商品開発から製造、そして販売戦略まで様々な業務に携わり、卒業生として初の女性杜氏になりました。学生時代には、酒類の特徴的な造り方と酒の香味との関係性について、利き酒とガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて調べる研究を行っており、この経験が新しい商品開発につながったものと思います。
鹿児島県は、温帯から亜熱帯にわたる南北600 kmの県域を有し、人が住んでいる離島の数も多いという特徴があります。そのため、地域食物には古くから健康効果が知られている食材や、オリジナルの製法で作られる食品がたくさんあります。私たちの学科では、これらの食物を通じて先人の知恵を科学的に証明・理解すること、そして得た知識を使って、基礎化学の発展や新たな利用方法を発見する能力を学ぶことができます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 一つに絞れません。年が経つにつれて、興味が広がっています。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? スコットランド。アイリッシュ・ウィスキーのメッカだから。 |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? 真心ブラザーズ。特に『サティスファクション』。 |