次世代の温調装置へ! 巨大な磁場での「磁気熱量効果」の解明
数十テスラの巨大な磁場を作り出す
私は、「パルス強磁場」という強力な磁場を瞬間的に発生させる装置を使って、物質が強力な磁場の中で見せる不思議な現象を研究しています。
磁場(磁束密度)の単位はテスラ(T)で表されます。日常生活でよく目にする磁石の強さは、だいたい0.1テスラくらいです。最も強力なネオジウム磁石では1テスラくらい。それ以上の磁場は永久磁石では作ることができませんが、コイルに電流を流すことで作ることができます(電磁石)。電磁石は電流に比例した磁場を発生するので、コンデンサーを使って瞬間的に大電流(数千アンペア)を流すと、数十テスラという巨大な磁場を作り出すことができます。これをパルス強磁場法と言います。
磁場中で物質が自発的に発熱/吸熱する「磁気熱量効果」
パルス強磁場中では、磁石でなかったものが磁石になったり、電気抵抗が変わったり(極端な例だと絶縁体が金属に変わったり)、結晶構造が変わったりと物質の様々な性質が変化します。中でも私は、磁場中で物質が自発的に温まったり冷たくなったりする「磁気熱量効果」という現象を調べています。これは物質中の原子や電子の乱雑さを表す「エントロピー」が変化し熱となって放出/吸収されることで起きます。したがって、温度の変化から物質内部の乱れや秩序の変化を知ることができます。しかし、パルス強磁場は、わずか0.03秒ほどで消えてしまうので、超高速で試料の温度を測る必要があります。
私は、大学院生のときにこのテーマに取り組み、高速で試料の温度を測定する手法の開発に大変苦戦しました。色々な方法を試しては失敗しての連続で、もはや不可能なのでは?と思うときもありました。だからこそ、良いデータが得られたときの喜びはひとしおでした。
最近では、巨大な磁気熱量効果を示す物質の探索やメカニズムの解明を行っています。現在普及している冷蔵庫やエアコンはガスを圧縮して冷やしますが、この巨大磁気熱量効果を使えば固体に磁場をかけるだけで温度を変えられるので、エネルギー効率の良い温調デバイスが実現すると期待されています。
「状態密度変化によるゼロヒステリスの巨大磁気熱量効果の実現に向けたメカニズム解明」

