社会言語学

多言語社会の課題

通訳を社会のインフラに〜情報弱者に対する情報保障のあり方


糸魚川美樹先生

愛知県立大学 外国語学部 ヨーロッパ学科 スペイン語・ポルトガル語圏専攻/国際文化研究科 国際文化専攻

出会いの一冊

こんな研究で世界を変えよう!

通訳を社会のインフラに〜情報弱者に対する情報保障のあり方

専門職としてのコミュニティ通訳者の養成が必要

日本には、日本語以外の言語が母語の人びとも多く暮らしています。日本語が母語でなくても生活に必要な情報がきちんと得られること、また自分の母語で伝えたいことが伝えられる情報保障のしくみを整えることが喫緊の課題です。医療や司法、教育、行政、福祉、防災などの分野で対応する専門家やスタッフと生活者の間での通訳をコミュニティ通訳と呼びます。情報保障のためには、専門職としてのコミュニティ通訳者を養成し機能させる制度が必要です。

医療を例に考えてみましょう。病気になったりケガをした時、日本語ができないことで病院に行くことを躊躇したり、病院で医師とうまくコミュニケーションがとれないと命に関わります。最近では、通訳者を雇用する医療機関や通訳者を養成・派遣する自治体もあります。

医療通訳の充実のために

日本には国レベルでの医療通訳制度はなく、各自治体によってしくみは多様です。職業ではなく、ボランティア依存という特徴もあります。その場合、どのような問題があるでしょうか。医療通訳の質と量、言語の多様性への対応など、課題はたくさんあります。また、質の高い通訳者の養成だけでなく、通訳を利用する側の理解と知識(ユーザートレーニング)も必要です。

現在、国内外のさまざまな分野の研究者と協働し、医療通訳場面のシミュレーション動画を作成し、医療通訳場面の分析、医療通訳利用を促進する研究をすすめています。

スペインのバルセロナ自治大学にて同僚の吉田理加先生と
スペインのバルセロナ自治大学にて同僚の吉田理加先生と
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

専門として学んだスペイン語が日本社会でどのように使われているかについて知りたいと思ったことがきっかけです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう
先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

学部の特色は?

外国語学部では、専攻言語の高い運用能力を身につけ、教養教育、学部専門科目を通して自由に自分の関心分野を深めることができます。

愛知県立大学外国語学部では、専攻言語とその地域社会・文化だけでなく学科・専攻を横断した学びができる「多言語社会課程」を設置しました。ブラジルやベトナム、フィリピン、インドネシア出身者が多く居住する愛知県において、外国語学部は、国外で活躍する人材を育てるだけでなく、地域社会の国際化、住民の言語的多様化に伴うニーズに応えていくことも重視しています。

外国語学部にコミュニティ通訳論という科目も設置され、大学院国際文化研究科国際文化専攻には、「コミュニティ通訳」を冠したコースが設置されました。同時通訳実践のため通訳ブースもあり会議通訳なども学ぶことができます。

学生たちはどんなところに就職?

就職先はさまざまです。大学院に進学する学生もいます。
●主な業種は→製造業、金融業、商社、自治体、IT関係、教育
●主な職種は→総合職、営業、公務員、SE、教員

外国語を専攻する学部であるため、専攻言語を活かせる企業が人気です。ラテンアメリカやスペインとの取引がある企業、国外への出張、駐在の可能性が高い企業などに就職する人も増えてきました。給料よりも、福利厚生の充実、楽しさや自分の可能性を求めて就職する人が増えているという印象を受けます。

ゼミではスペイン語とジェンダーをテーマに、名古屋レインボーパレードに参加します
ゼミではスペイン語とジェンダーをテーマに、名古屋レインボーパレードに参加します
先生からみなさんへ

先生からのメッセージ

AIの発展により人間の通訳は不要ではないかと考える人もいるかもしれません。果たしてそうでしょうか。AIの通訳・翻訳で十分な場面、プロの通訳者が対応すべき場面をどう判断するかも通訳研究の課題となってきています。

先生の研究に挑戦しよう!

日本で生活する外国籍住民には、どんな国の出身の人がいて、なぜそのような国籍が多いか、日本のどの地域に多く、どういう問題を抱えているか、国はどのような政策を取っているか、各地域で外国籍住民を支えるためにどのような取り組みがなされているかといった、日本社会の多言語化について調べてみましょう。

中高生におすすめ

増補新版 ことばのバリアフリー 情報保障とコミュニケーションの障害学

あべやすし (生活書院)

本書は、コミュニケーションの「あたりまえ」をひっくり返し、情報保障のあり方を考えさせてくれる。高校までに授業で学習する言語/ことば、およびことばと社会に関する考え方を大きく転換させてくれるのではないか。本書のテーマと同様、非常にわかりやすく書かれているところも魅力である。


ことばと国家

田中克彦(岩波新書)

出版されてからすでに30年が経つが、現在でも大学の授業で課題図書等に選定されている。国家語と方言の間によこたわる差別、無国籍の雑種言語を母語とする人びと、外来語についてなど、ことばの政治性を考える古典かつ基本文献である。


識字の社会言語学

かどやひでのり、あべやすし:編著(生活書院)

識字とは、文字の読み書きができること。本書は、「あたりまえ」と思っている、文字の読み書きの能力について新しい考え方を提供してくれる。識字率を上げる取り組みの歴史、そして今、識字が社会でどのような意味を持っているのか考察する。


節英のすすめ 脱英語依存こそ国際化・グローバル化対応のカギ

木村護郞クリストフ (萬書房)

「節英」とは、「自分の英語使用がどのような意味をもつかを自覚して、節度をもって使うこと」(表紙より)。本書も、高校までに授業で学習する言語/ことば、およびことばと社会に関する考え方を大きく転換させてくれるし、とくに自分の英語学習や英語使用を再考するきっかけにもなる。

一問一答

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