真核生物の加速度的進化は巨大ウイルスがもたらした
真核光合成生物の進化を紐解く
植物の葉緑体が、シアノバクテリアに由来することは、よく知られています。
しかしこのオルガネラが具体的にどのような進化のプロセスを経て生まれたのかは未だによくわかっていません。この真核光合成生物誕生の謎を、ポウリネラという殻を持つユニークなアメーバを調べて解き明かしたいと考えています。
この有殻アメーバは約1億年前にシアノバクテリアとの細胞内共生を経て光合成生物になったと考えられており、その共生開始時期は、葉緑体(10億年以上前)と比べて比較的最近であることがわかっています。
有殻アメーバのゲノムから見えた共生進化の始まり
この有殻アメーバの核ゲノムを調べると、共生開始時期に大規模な遺伝子の水平転移が生じて、生命の設計図であるゲノムが短い期間で急激に書き変えられたことが示唆されました。
細胞内共生進化に巨大ウイルスの影
同時に有殻アメーバのゲノムからは大量のウイルスの配列も検出されました。興味深いことに、それらは巨大ウイルスの仲間であり、ウイルスが細胞内共生開始時期から活発に有殻アメーバに感染し始めたことが、その配列の解析から示唆されました。
現在、巨大ウイルスがベクターとなって遺伝子の水平転移を促し、有殻アメーバの細胞内共生進化を加速したのではないかと考えています。これらの巨大ウイルスの細胞内共生進化における役割を明らかにする研究を進めています。
大学院時代に遺伝子発現レベルでの核と葉緑体のクロストーク(相互作用)を研究しており、その時からずっとオルガネラや細胞内共生に関わる研究を行ってきました。細胞内共生の研究を通じて、共生という現象の原理・法則を知りたいと考えております。
有殻アメーバの研究もその延長線上にあったのですが、その研究に突如としてウイルスという新たな役者が出てきました。研究がどのように展開するのか私自身、予想がつかず毎日ワクワクしています。
「真核生物の加速度的進化は巨大ウイルスがもたらした-状況証拠から実態解明へ」
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? 中島みゆきの『銀の龍の背に乗って』がお気に入り。心にしみます。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 中学生の時に見た『Stand by me』が一番、印象に残っています。中学、高校での感動は一生ものです。 |