病院での「死者へのケア」と日本人の死生観を探究
「どう生き、どう死ぬか」を考える学問
私の専門は、「死生学」です。聞き慣れないかと思いますが、簡単にいうと「どう生き、どう死ぬか」を考える学問です。
病や死といった人生の危機において、「私の人生どんな意味があったのか」「どうして私がこんな目に遭わなければならないのか」「死んだらどうなるのか」といった実存的な問いに、患者さんや大切な人を喪ったご遺族は直面することがあります。
病院という場を中心に、こうした問いに向き合う方々をいかに支えることができるかを検討すると同時に、生老病死の問題に向き合う中で立ち現れてくる現代日本人の死生観を探究しています。
多死社会を迎える日本の課題
今行っている研究では、病院での「死者へのケア」に注目しています。
今日、伝統的な葬送儀礼は急速に簡素化される傾向にあります。そうした中で、私たちは死者をいかに遇することができるか。
多死社会を迎える現代日本社会において、大きな課題の一つです。病院は基本的には「生者」をケアの対象としていますが、多くの人が病院で亡くなる中、病院での「死者へのケア」を検討することの意義は大きいと考えています。
病院に勤務する宗教者への聞き取り
「死後の処置(エンゼルケア)」を行う看護師さんと、病院に勤務する宗教者にインタビューを行っています。「病院に宗教者?」と思われるかもしれません。
宗教的背景のある病院には、布教伝道はせずに、上に挙げたような実存的問いを抱える患者さんのこころのケアを担当する宗教者がいることがあり、彼らは病院での「死者へのケア」の重要な一端を担っています。
「無宗教」を自認することの多い日本人が求める「死者へのケア」と、現代日本人の死生観や宗教性の一端を示すことができたらと考えています。
歴史が好きで、歴史を学びたくて大学に入学したのに、専攻を選ぶときに、日本倫理思想史のコースに進んでしまいました。現代社会における倫理について考えようと大学院に進学したところ、死生学に出会い、修士・博士論文のテーマは「生と死の教育」になりました。
大学院生の頃、病院で活動する宗教者たちに出会い、一緒に研究会などを開くようになり、それが現在の研究テーマにつながっています。高校生の頃には想像もしていなかった分野で、縁の不思議を感じます。
「病院は死者をいかに遇することができるか:医療現場での『無宗教』者への死者へのケア」
私は医療学部で一般教養の科目を担当しています。
「死生学」は宗教学だけでなく、哲学、倫理学、社会学、社会福祉学、医学、看護学、文学、芸術など、多様な分野にまたがる領域です。死に日常的に触れることになる看護師や臨床検査技師を志す学生さんが、死生学を学ぶ機会となっています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? やはり、宗教学、死生学でしょうか。間違いなく、面白いですから。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 森山直太朗さん。「生きてることが辛いなら」がコンビニで流れてきた時の衝撃は忘れません。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 塾の講師をしていました。「時給が良かった」ことが1番の理由です。バイトしてお金貯めて、ひたすら海外旅行に使いました。モンゴル、ネパール、タイ・・・。世界が広がりました。 |
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Q4.好きな言葉は? 和而不同(和して同ぜず)。「協調することは大事だが、同調はしない」という意味で、論語の一節です。 |