パソコンのように、なんでもできるマルチタスク型のコンピュータではなく、家電やロボットのように、機械に特定の働きをさせるための技術を組み込む方法を学ぶ組込みシステム研究。大川先生は、産業用から家庭用まで幅広いニーズがあるロボットを低消費電力に動かすために、ロボット開発者が簡単に組み込んで使えるコンピュータの半導体チップの研究開発をしています。
ソフトウェア「みたいに」使えるハードウェアで、ロボットの低消費電力を実現
ロボットが柔軟でスピーディーな動きをするためには、人間の頭脳にあたるコンピュータは非常に重要になります。
ロボットの頭脳をパカっと開けて中を覗いてみましょう。ロボットの頭脳はソフトウェアが組み込まれた部品の集合体です。複数の部品をつなぎ合わせているため、部品ごとに交換ができます。
ならば高速処理できるソフトウェアを組み込んだマイクロプロセッサのような部品をたくさん使えばさくさく動くのではないか、と思う人もいるかもしれません。しかし、それでは消費電力も大きくなってしまいます。災害時の捜索活動や人命救助、高齢者の見守り介護など、人間が働くには過酷な現場でのロボットの活躍がますます期待されていますが、バッテリーがすぐになくなって動かなくなってしまうようでは大変困るのです。
そこで、頭脳部分のコンピュータ部品を、ハードウェアだけれどもソフトウェアのように書き換えられて、その上低消費電力のFPGA (Field Programmable Gate Array)という半導体チップを使えばいいのではないかと考えました。
FPGAは、「AND/OR/NOT」ができる論理ゲートやメモリで構成され、その配線をつなぎ変えることで、ソフトウェアのように自由に論理回路を書き換えることができます。また、取り替えも可能です。しかもハードウェアとしての並列処理ができて高性能です。そしてなんと言っても、消費電力を抑えることができるのです。
しかし、FPGAはハードウェアなので回路の規模に制限があります。ロボットに複雑な動きをしてもらうためには、それだけ細かな手順を伝えられる複雑な論理回路が必要になります。
ロボット開発者にとって、限られた回路規模の中で高性能な回路を作るのは至難の技です。そこで、FPGAの論理設計は専門家にやってもらい、あとはロボットに入れるだけ、という部品にしてしまえばいいと考えました。そうすれば、ロボット開発者にも簡単に使うことができます。
実際に、パソコンとFPGAに同じ処理をさせた実験では、処理の速度はパソコンと同じくらいで、消費電力はパソコンの約十分の一という結果を出すことができました。これなら電力の供給が難しい現場でも大活躍が期待できます。しかも、FPGAはインターネットにつなぐことができるので、クラウド上にある計算式をロボット同士で共有しながら、常に新しい計算式を使って作業をすることができます。ソフトウェア「みたいに」使えるハードウェアを使うことで、質の高いロボットが開発できるのではないでしょうか。
ハルロック
西餅(講談社 モーニングKC)
電子工作x女子大生。「小さい頃、ドライバーで何でも分解していた少女は、高校時代、ひょんなことから電子工作に目覚めた(第1巻裏表紙より)」という大学生はるちゃんが、大学生活を送りながらいろいろな変なものを作っていく、というマンガです。
例えば、大学に入って知り合った、ぼっち(独りぼっち)な友人を励ますために作った「ぼっち・ザ・LED」は、小型コンピュータ基板(RaspberryPiやArduino)を使って、全世界の「ぼっちTweet」を数えて、ぼっちの人が何処にいるかを地図模型上にLED(Light Emitting Diode:光る半導体デバイス)で表示する・・・そんな工作です。ここにはインターネット連携による組込みシステムの喜びが溢れています。
伝わる・揺さぶる!文章を書く
山田ズーニー(PHP新書)
高校生向けの小論文指導のエキスパートが「書くために、何をどう考えていくか」について多くのノウハウを教えてくれます。しかし単なる技術集ではありません。文章を書くことは、考えることであると気づかせてくれます。さらに「お願いをする」「志望理由を書く」といった実践例も多くあり、文章を書くことが苦手だと思っている人におすすめです。
作文が苦手と思っている人は多いと思いますが、「何を書いたらよいかわからない」という悩みが一番多いのだと思います。そういう人は、プロローグだけでも読んでほしいです。大学受験の小論文の書き方を指導してもらう高校生女子が、著者による2時間だけの指導を受けて、どのように変わるのでしょうか。「考える方法がわかれば、文章は生まれ変わる」という実例だと思います。「意見とは何か」「なぜ、意見が出ないのだろう?」という根本的なところから読者と一緒に考えたうえで、「論点」「相手の視点に立つこと」「視野を広げること」など具体的な考え方を身につけることができます。文章の書き方は、一生役立つスキルですよ!
ソフィーの世界
ヨースタイン・ゴルデル 須田朗:監修、池田香代子:訳(NHK出版)
主人公は14歳のソフィー。「あなたはだれ?」「人間はどこからきたのか?」という哲学の問いに、昔の哲学者たちがどのように答えてきたのか、ソフィーはどう考えるのか。哲学にちょっと興味がある人への入門書として、とてもお勧めです。