日本語学

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室町時代から現代までの、日本語アクセントの変遷をたどる


上野和昭先生

早稲田大学 文化構想学部 文化構想学科 複合文化論系(文学研究科 人文科学専攻 日本語日本文学コース)

出会いの一冊

ことばと国家

田中克彦(岩波新書)

この本を読むまでは、「国語」は太古の昔から絶対的な権威を持つものとして伝えられてきたように考えていましたが、実は近代国家建設の過程で形成されたものであるということを、この本に教わりました。私は、この本によって、「国語」の本質をよく理解しました。そして、そのような「国語」だからこそ、また別の意味で大切に思うようになりました。

こんな研究で世界を変えよう!

室町時代から現代までの、日本語アクセントの変遷をたどる

平安鎌倉期のアクセントの記録

私は、これまで日本語アクセントの歴史的研究をしてきました。平安鎌倉期の文献の中には、当時の京都アクセントを記録したものがあります。そこには、漢字の声調をあらわす声点(しょうてん)を仮名にも差(さ)して、それによってそれぞれの仮名の音調を、左下は平声(ひょうしょう)で低平調、左上は上声(じょうしょう)で高平調などと表してありました。

例えば、「石」をあらわす仮名「いし」に、「い」には上声点が、「し」には平声点があれば、当時「いし(石)」は〔高低〕のアクセントだったことがわかるという具合です。

京都アクセントの変遷を明らかにした

私たちの先輩は、そのような作業を重ねて、だいたい平安時代から現代までの京都アクセントの変遷を明らかにしました。アクセントを仮名一つひとつの音調に分解し、それぞれに差された声点から高低の音調を考え、さらにそれらを合わせて単語のアクセント型を推定したわけです。

高低二段の音調でとらえてよいのか

しかし、アクセントを仮名それぞれの高低二段の音調によって把握するというやり方について、過去の人たちも等しくそのように認識していたのか、ということについては反省がおろそかでした。疑いを持つようになったのは、室町期以降の資料に、どうもそれとは違った見方で仮名や語の音調を表そうとしたもののあることがわかったからです。

過去の四声観・アクセント観について調べることは、現代の学問の影に隠された部分、すなわち暗黙の前提を白日の下にさらけ出す作業だと思っています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「室町期以降の日本における四声観・アクセント観についての研究」

詳しくはこちら

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言語文化ゼミの合宿にて(2019年12月)
言語文化ゼミの合宿にて(2019年12月)
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(2) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

◆主な職種

(1) 総務

(2) 中学校・高校教員など

◆学んだことはどう生きる?

私は、文化構想学部複合文化論系で「言語文化ゼミ」を担当しています。そこでは、みんなで地域を決めて、言語調査に出かけることにしてきました。ゼミ生のなかには、中学高校の教職に就く者がいます。彼らにとって、生徒の背景にある地域言語に注意する目や耳を身につけることは重要です。特に国語の教員になっている者は、これを生かしていることと思います。

先生の学部・学科は?

早稲田大学文学学術院(文化構想学部、文学部、文学研究科)の日本語学は、特に特色というほどのものはありません。教員の一人は現代日本語を中心に文法を研究しており、一人は古代日本語の文字表記を研究しています。

私は、日本語音韻史、アクセント史を専攻しています。方言、地域言語も研究対象とすることがあります。研究傾向をあえて言えば、「多様である」ことです。古文献も読み、言語調査にも出かけ、コーパスも扱うという研究を、三人で対応しています。

なお、早稲田大学(学部)では、文化構想学部のほかにも、文学部日本語日本文学コース、教育学部国語教育専攻などでも日本語学の研究教育がなされています。

中高生におすすめ

日本語の起源

大野晋(岩波新書)

私は、高校生の頃青版(1957)の『日本語の起源』を読んで、日本語学の考え方や、研究論文の論理に、強く心を打たれました。日本とは何か、日本語はどういう言語か、というようなことにきちんと回答を与えてくれた、私にとっては貴重な書物です。

青版の岩波新書ですから、その内容は古いかもしれませんが、著者の論理がよく伝わってきたことを覚えています。その後、新赤版(1994)に同じ著者の同名の書が出ましたが、私はあえて旧版をお薦めします。


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