一般的に法学は、「六法」を中心とした法律を研究対象とします。これを実定法学といいます。一方、「基礎法学」には、対象となる法律は存在しません。基礎法学は、一国の法律の枠にとらわれず、法制度の前提・背景となっている要因について研究するものです。私が専門としている、比較法・外国法という分野は、各国の法制度の類似点、相違点を明らかにするものです。
例えばITの世界的な普及のなかで、電子商取引・消費者保護に向けた国際的対応が必要になっています。特に最近は、GAFA等の多国籍のIT企業の活動を国際的にどのように規律すべきかが議論されています。グローバル社会においては、統一的な法整備、あるいは自国の法制度を維持するにしても、国際的調整が必要となります。
米国は規制をしない。ドイツは歴史的事情から規制
世界には特定の思想・信条を禁止する国や、神を冒涜する表現を禁止する国が少なくありません。日本は思想・信条の自由は保障されていますが、特定の集団などを冒涜する「ヘイト・スピーチ」を規制すべきか議論されています。米国ではこのような規制は表現の自由を否定するものであるとされ、逆にドイツではナチズムへの反省という歴史的事情から規制が容認されています。
この類の表現がネット上で行われた場合どうすべきでしょうか。それぞれの国の歴史などをふまえて、表現の自由保障を拡充させつつ、インターネットを発展させるための方策を提示していくのが、私の追究しているテーマです。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→公務員、IT企業
- ●主な職種は→政策研究・立案、ネット事業管理
- ●業務の特徴は→情報関連のものがほとんど
分野はどう活かされる?
独立行政法人等での情報関連の諸外国の政策研究では、学んだことが直接活かされています。
IT社会への移行に伴って法体系の再構築が不可避となっています。この状況の中で新たな体系の構築を皆さんで考えてみましょう。
明治大学法学部は、比較法・外国法科目および基礎法科目をそれぞれ4単位必修としています。また法学部学生が所属する5コースの中に、国際関係法コース、法と情報コースがあります。
興味がわいたら~先生おすすめ本
インターネットが死ぬ日
ジョナサン・ジットレイン
パソコンを自分で自由にカスタマイズできるのが最高の社会であると考え、iPhoneのように様々なサービスが提供され、個人が自由にカスタマイズしにくいものについて批判的な著者。米国の法科大学院の教授であり、情報法の研究者だ。米国の基本的法思想の一つに「徹底的な個人の自由の追求」というものがあり、情報法研究の中でも、米国の法理論は、個人の自由な活動、民間企業の自由競争を基本としているが、本書はその側面を前面に出している。個人の自由と便利さをどのようにとらえるのか、その日米の意識の違い、さらに日米の法思想、情報分野の法政策理念の違いを考えさせる本だ。 (井口耕二:訳/早川書房)
TED
学術・エンターテインメント・デザインなど様々な分野の人物が、魅力的なプレゼンテーションを行う番組。『インターネットが死ぬ日』の著者で情報法の研究者、ジョナサン・ジットレインも出演。また憲法学、サイバー法学が専門で、スタンフォード大学のインターネット社会研究所などを歴任したローレンス・レッシグや、ハーバード白熱教室で知られる法哲学者マイケル・サンデルなどの出演した回も、基礎法学の分野を理解するのに有益だ。