近代朝鮮における宗教とナショナリズムの関係について研究しています。朝鮮王朝の前近代的な世界観を脱皮して、近代的な意味での「国民国家」を形成するためには、当時の人々にとって絶対的コスモロジーとして存在した「儒教」を一つの「宗教」として相対化する作業が必要でした。その過程の背景には、西洋から流入した近代的な「宗教(religion)」概念の伝播と近代学問として成立した「宗教学」の受容が存在しました。
また、朝鮮時代末期から日本の植民地時代にかけて、天道教(東学)・大倧教(檀君教)・甑山教・円仏教など数多くの新宗教が登場し、それらの活動を通じて「伝統の創造」として、新たな民族アイデンティティが創出されていきました。日本の植民地支配という特殊な時代状況の中で、特に「宗教」および「宗教学」と関連する西洋の近代思想が、朝鮮土着の伝統思想とどのように相克・融合し合いながら朝鮮近代におけるナショナリズムを形成していったのか、その過程について研究しています。
その他にも最近は、1980年代以降の個人主義的消費文化の発展とともに登場したウェルビーイング(丹田呼吸団体、スローライフ、エコロジー、瞑想などへの志向)やヨガブームを新種の新宗教運動として捉え、これらに関する研究も行っています。
映画や観光の領域の中で、朝鮮の近現代史はどのように描かれているのか
現代の東アジアでは、各国間の歴史認識の在り方が大きな問題となっています。単に政治や外交の分野で摩擦や葛藤を引き起こしているだけではなく、文化の領域においてもナショナリズムの先鋭化という問題として現れてきています。このような時代状況をふまえて最近は、東アジアで流行している「韓流」ブームを分析し、特に韓国映画の中で、朝鮮半島の近現代史がどのような戦略的手法で表現され、それが現代韓国人の歴史観にどのような影響を与えているのかについて研究しています。
また、観光(ツーリズム)の領域でも歴史認識の問題は大きな影を落としています。近年では、戦前期に中国領内で展開された韓国系抗日民族独立運動に関する史跡が観光地化され、韓国人による中国観光の人気コースになっています。このような抗日民族独立運動関連史跡の観光地化が日韓間の歴史認識にどのような影響を与えているのか、グローバル・ツーリズムの観点から研究を行っています。これらの研究は、日本と韓国の間で深刻化している歴史認識問題を考える上で、とても重要な研究であると考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種→金融業(銀行・信用金庫)、製造業、公務員、サービス業など
- ●主な職種→営業職、事務職など多様です。
分野はどう活かされる?
アパレルメーカーに就職した学生が韓国との取引で、また、マスコミに就職した学生が取材で韓国語を生かしています。大韓航空に就職した学生が韓国語を仕事に生かしています。その他、韓国の高校で日本語教師となった学生もいます。
日本では今、韓国の映画・ドラマや大衆音楽のコンテンツが巷に溢れています。特に若い人たちの間でK-POPは絶大な人気を誇っています。また、朝鮮半島は激動する世界情勢の震源地となっており、日本の新聞やニュースを通じて、毎日のように韓国に関する報道がなされています。
その一方で、韓国に住む人々が普段どんな生活をしているのかについてはあまりよく知られていません。宗教事情もその一つでしょう。日本と同じように似ていると思われがちですが、実はまったく日本と異なります。韓国ではキリスト教の信者数が多く、アジアでは珍しいキリスト教(プロテスタント)の国なのです。
韓国の宗教事情について学ぶことは、いかに私たちが大切な隣国の人々の暮らしぶりについて知らないかを自覚させてくれると同時に、日本の文化・生活をグローバルな視点から客観的に捉えなおすことにもつながります。
立命館大学文学部では、「人間研究」「日本文学」「日本史」「東アジア」「国際文化」「地域研究」「国際コミュニケーション」「言語コミュニケーション」という八つの学域に分かれて、人文学に関する様々な学びをします。この中で、東アジア研究学域には、中国文学・思想専攻、東洋史学専攻、現代東アジア言語・文化専攻の三つの専攻があります。
私が所属している現代東アジア言語・文化専攻では、中国語または朝鮮語(韓国語)の実践的なコミュニケーション能力を培いながら、同時代の東アジア各地域における文化や社会、歴史に対する理解を深めます。また、東アジアの人々と直接触れ合う現地実習プログラムを通じて、異文化理解と多文化共生について体験的に学びます。こうした実践的な学びを通じて、21世紀のアジア新時代を担い、国際的な舞台で活躍できる人材の育成を目標としています。