みなさん誰しもある特定の地域に暮らしています。その地域の地理的条件、自然条件、そして歴史や文化、生活様式はすべて独立して存在するものではなく、それぞれが相互に関連しあって存在しています。
私は琉球(現在の沖縄県)・薩摩(現在の鹿児島県)をフィールドとして、その地域に生まれた書物、蔵書文化を研究していますが、書物を生み出した社会や地域、流通などは、書誌学のみならず、文学、歴史学、海上交通史など、様々な学問分野の協力を得てはじめて明らかになることも非常に多くあります。
1冊の書物から見えてくる江戸時代の地域事情・国際情勢
例えば、天保8年(1837)に出版された『質問本草』という書物があります。薩摩藩主・島津重豪(1745-1833)の命令で、薩摩の植物園で薩摩、南西諸島の薬用植物の絵図と標本が作成され、さらに、薩摩藩が間接支配をしていた琉球を通じて、中国の福州、北京の薬物学者に「質問」をし、その内容を整理したものです。
この書物の成立には、18世紀の日本、琉球、中国をめぐる国際情勢やそれぞれの地域の薬物学、医学、博物学の状況が関係しており、必然的に広い視野と学問の個別的分野を超えた学際的研究が必要になります。
一般的な傾向は?
- ●主な職種→一般企業勤務、中学・高校教員
分野はどう活かされる?
特定の分野に拘らず、様々な地域の情報に広く積極的にアクセスする能力を有しています。
中国や日本の書物に興味を感じている方、地域の問題をより広い視野から考えてみたい方、固定的な学問分野を超えて勉強してみたい方を歓迎します。
鹿児島大学「法文学部」の名前はわかりにくいと言われることがあります。確かに、法律を学ぶ法学部、文学を学ぶ文学部という名称に比べると、わかりにくいかもしれません。実は、法文学部は、法学、経済学、文学などを学問の垣根を越えて学ぶことが可能な総合学部なのです。それは、時々変化する現代社会に対応して、狭い専門性をこえて制度設計されたとも言えます。
現在、鹿児島大学法文学部は、法経社会学科、人文学科という2学科制の元に、伝統的な学問組織を継承した法学コース、経済学コース、人文学科を引き継ぐ多元地域文化コースに、地域社会に焦点を当てた地域社会コース、心理学を専門に学ぶ心理学コースを加えた5コースが置かれています。
所属コースで専門的な学問を修めるとともに、コースの壁を越えた学際的授業や、現場感覚を有し広い視野を獲得するための科目「観光学」「島嶼ツーリズム論」「まちづくり論」「マスコミ論」なども受講可能になっています。