日本の国土の約60%は山地です。これまで日本の山地のあちらこちらで「深層崩壊」と呼ばれる、大規模な斜面崩壊(山崩れ)が発生してきました。深層崩壊は山地を荒廃させ、山麓の都市や農地にも大きな災害をもたらします。一般に深層崩壊は強い地震動や豪雨で引き起こされることが多いですが、過去(特に歴史時代・地質時代)の深層崩壊が、「いつ、どこで、何を引き金として」起きたのか、ほとんど解明されていません。
深層崩壊の発生地点や被害の予測に欠かせない研究
私は、日本アルプスで、最終氷期(約12~1.2万年前)から現代までに起こった深層崩壊の地形・地質特性を詳しく解明する研究に取り組んでいます。深層崩壊に巻き込まれた樹木の化石を採取して年代測定を行い、深層崩壊の発生年代を推定する最新の手法も活用し、地すべりが起こった年代を整理し、古文書の解読や地質調査なども通じて深層崩壊にかかわる数多くの謎ときに挑みました。
その結果、過去数万年間にわたる深層崩壊の発生と古地震や古豪雨との関係を解き明かすことができました。この研究は、将来起こる海溝型巨大地震や豪雨による深層崩壊の発生地点や被害の予測にも、欠かすことができません。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→建設業、サービス業、学術研究、公務、教育など
- ●主な職種は→技術職、専門職、公務員、教員など
- ●業務の特徴は→自然災害調査・地質調査、行政防災部署における政策決定、災害教育など
分野はどう活かされる?
独立行政法人系の研究所の研究員、市役所の防災関連部署、地質系コンサルタント会社での地質調査業務、旅行会社における自然系ツーリズムの立案、高等学校社会科教員(地理)など、自然地理学の素養を活かせる仕事に就いた卒業生が少なくありません。
地形や地質の成り立ちや災害の歴史を、いっしょに解明しましょう。
環境地理学科は1学年あたり約55名の学生に対して専任教員が9名。徹底した少人数教育が特徴です。毎年9人の教員による9つのゼミが開講されますので、各ゼミ平均6~7名の少人数環境で、発表や討論、卒論指導が行われます(3年次以降)。どのゼミを履修するかは学生の希望を尊重して決定されます。専任教員は地理学の広い学問領域をカバーできるように、専門分野の偏りがないように構成されています。
野外調査の実習を通じてフィールドワークの技法を学びます。GIS(地理情報システム)やリモートセンシングなどの授業もあります。多様な専門科目の学習を通じて、地球とのつながりを尊重する豊かな地理学的想像力を育みます。