地理学

地殻変動の歴史をひも解き、将来の地形変化を予測する。それらを社会に生かす取り組み


廣内大助 先生

信州大学 教育学部 学校教育教員養成課程 社会科教育コース

どんなことを研究していますか?

現在の地形は、長年の地殻変動と環境変動の結果作られてきたものです。プレートが動くことによって、火山活動や地震などの地殻変動が起きます。また、地球の温暖化や寒冷化などの環境変動に関わる、氷河の消長と海面の昇降が地形変化を起こします。私はこうした、地形の形成と変化をテーマにしています。その一つが、東アジア地域の活断層や海溝型地震による地殻変動の研究です。過去の変化をひも解き、そのでき方を詳しく知ることができれば、将来の地形変化の予測につながります。

過去の環境変化や地殻変動による地形変化を詳しく知ることから、将来の環境変動や地形の変化を正しく知ることができます。このことは無害化に10数万年を要する放射性廃棄物の処分といった課題にも貢献できるでしょう。地形の形成は、災害や防災活動にも密接に関わります。将来、洪水がどこで起こるのか、これを示したハザードマップが公表されています。今後災害に強い町をどう作るべきかなど、災害とどう付き合い暮らしていくのかに対して有用な情報となるでしょう。

さらに、地形の形成や災害をいかに社会に伝えていくのかについての研究も行っています。災害の経験を後世に伝える震災アーカイブ(記録)を被災した自治体と共に作り、地域住民との防災活動や学校での防災教育につなげています。

防災教育カリキュラム開発と子供がつくる地域防災マップ
https://gakusyu.shinshu-bousai.jp/

2014年神城断層地震震災アーカイブ
https://kamishiro.shinshu-bousai.jp/

災害の記録や記憶を後世にどう遺し、伝えるか

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私の研究室では災害の記録や記憶をどう遺し伝えるのかについての研究も行っています。2014年に最大震度6弱を記録した長野県神城断層地震が発生しました。幸いにも死者はでませんでしたが、多くの方が怪我をされたり家を失い、11月の寒い時期に避難生活を送り、大変なご苦労がありました。震災の記録写真や被災者へのインタビューを記録した動画など作成収集し、GIS(地理情報システム)のデータベースに収録して、位置情報とあわせて公開しています。

また被災地の学校でアーカイブを活用した防災教育を行うなど、災害の記録を地域の財産として引継ぎ、活用し続けていく仕組みづくりを支援する活動などをしています。

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地理学実習の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→教育、公務員、地質・建設・都市計画コンサルタント業
  • ●主な職種は→小・中・高教員、国・県・市町村職員、技術職、研究職
  • ●業務の特徴は→学校での教育、通常の行政職員、GIS関連、地形地質地盤判定・評価等
分野はどう活かされる?

中学校や高校の社会科や地理の教員や小学校教員として、また、生徒児童に対する防災教育などで学んだことが活きています。行政職員については、行政における課題解決、特に災害や防災を学んだことを活かしています。地理情報を用いた行政や企業のコンサルティング(都市計画、電気ガスなど)業務、ダムや地すべり、水資源などに関わるコンサルティング業務などで学んだことが活かされています。

先生から、ひとこと

地理学は社会科学から自然科学までを幅広く網羅し、また災害など実社会の課題とも直結した学問分野です。研究室では自ら課題を見つけ研究に挑戦することで、課題を解決し社会で生きる力をつけることができます。地理学の面白さを通して、大学で有意義な時間を過ごして欲しいと願っています。

先生の学部・学科はどんなとこ

本学では教育学部と経法学部で地理学を学ぶことができます。経法学部では都市・経済地理学・まちづくりなどを専門とする先生が在籍し、地域づくり、まちづくりなど社会問題ともリンクした課題にも取り組むことができます。教育学部では、自然から人文の様々な分野に取り組むことができ、特に自然地理学(地形学)について詳しく学ぶことができます。

教育学部で毎年実施する地理学野外実習では、国内の主要都市に出かけて、その地域の地理学的なテーマを各自が設定し、自ら調査して報告書をまとめます。実習は集中形式ですが、事前3回、事後3回の指導を手厚く行い、テーマ設定から調査方法までしっかり準備して実習に臨んでいます。また報告書の作成にあたって、GISや描画、統計等各種ソフトを活用しての分析・製図、テーマによっては火山灰や電気伝導度、植物珪酸体等分析にも取り組みます。そのためのソフトやPC、実験環境が整えられています。これら培った知識や技術を用いて、卒業研究に取り組みます。

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防災教育への取り組み。小学校にて防災マップ作りを行いました。

先生の研究に挑戦しよう

ハザードマップを見て、町の危険を考えてみましょう。危険な箇所は、ほぼ必ず、地形や地盤と関係しています。過去の地形図や航空写真を見ると、災害が起こる危険な場所には人は住んでいませんでした。人々はいつから、なぜ、そこに住むようになったのでしょう。また災害を減らすためにはどんな解決方法が必要なのか考えてみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

防災・減災につなげる ハザードマップの活かし方

鈴木康弘

ハザードマップは災害研究に取り組む地理学の重要な成果の一つだ。これは災害と地形がどう関わるのか、その関係を理解することに役立つ。一方、自然相手に完全なものはできず限界もある。自然災害予測の難しさや、その成果と限界を考えながら、私たちがハザードマップをどう使い活かしていくのか、考えみてほしい。 (岩波書店)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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