銀行のATMや列車の運行管理などを支えるコンピュータシステムは、故障や障害が起きれば、その社会的被害は甚大です。個人情報流出やサイバーテロへの対応などセキュリティ対策は今後ますます重要となるでしょう。ただし、ユーザ認証や暗号化、不正アクセス対策を講じることでシステムの安全性は高まりますが、セキュリティ対策の処理に時間がかかれば利便性が損なわれます。そこで、セキュリティ対策の処理を高速に実行できるコンピュータシステムを開発し、利便性との両立を図る研究が近年増加傾向にあります。
セキュリティの高速化と利便性を両立
近年の研究動向でもある不正アクセスの高速な検知が、現在の私のテーマです。光回線などの進歩で高速通信が可能になった現在のインターネットですが、不正アクセスをチェックするコンピュータの速度が追いついていないという現状があります。そのため、高速にチェックできるようコンピュータの高速化が求められており、さらには、日々変化するウイルスに迅速かつ柔軟に対応できる機構も必要です。また、コストも重要ですので、これらの要望を兼ね備えたシステムの開発を目指しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→製造業(電気機器、精密機器)や運輸・通信業
- ●主な職種は→ITエンジニア、電気・電子・機械技術者
- ●業務の特徴は→計算機システムの設計・開発やシステムを活かした新しいサービスの提供など
分野はどう活かされる?
卒業生は、主にコンピュータの専門家(仕組みや性能を熟知した人間)としての業務を行っています。具体的には、自動車の次世代エンジン(電子制御部分)の設計・開発、家電製品やICT による社会インフラシステムの開発、ICT を使った新しい公共・教育サービスの開発などです。
難しそうに思えるコンピュータの設計も、実際はパズルを解くように行われています。パズルの新しい解き方を一緒に発見して、次世代コンピュータを設計しましょう!
広島市立大学情報科学部は、情報科学を専門に研究・教育する大学で、全国的に見ても、本学ほど情報科学について幅広く研究・教育を行っている大学は、ほとんどないと思います。そのため、学内だけで情報科学に関する様々な共同研究を行うことができるのが大きな特徴です。私は計算機システムが専門ですが、本学には、情報学基礎から人間情報学、情報学フロンティアまで情報学の分野をそれぞれカバーする教員が所属しています。教員の数も多いため、様々な研究が行えるだけでなく、少人数教育が行われている点も特徴の一つです。
興味がわいたら~先生おすすめ本
電子立国 日本の自叙伝
相田洋
かつて半導体王国や電子立国と呼ばれ、コンピュータの最先端をリードしていた日本は、どのようにして築きあげられたのか。先人たちの体験談を交えながら、わかりやすく描く。ものづくりの楽しさだけでなく、先人たちが苦難の末に勝ち取った栄光の数々に感動する。本に出てくるコンピュータシステムは古いものが多く、システムの用途や要望も今とは全く異なるが、研究開発者の追い求めるものに大差はない。この本を読めば、計算機システムという研究分野が何をめざしている学問か知ることができる。また、物事に行き詰まったときに読むと、先人たちのように苦難を突破しようと気力がわいてくる。本書はNHKスペシャルの出版化。DVDにもなっている。 (NHK出版)