核融合学

核融合炉の運転、制御、事故に備え、燃料であるトリチウムを精密に制御・計測する


波多野雄治 先生

富山大学 水素同位体科学研究センター

どんなことを研究していますか?

未来のエネルギーとして期待される核融合炉は、燃料として重水素と三重水素(トリチウム)を核融合させることで莫大なエネルギーを取り出します。トリチウムは放射性物質であり、β(ベータ)線という放射線を放ちます。トリチウムからのβ線はエネルギーが低く皮膚の表層で止まるため体外からの被ばくは問題となりませんが、体内に大量に取り込むと放射線障害のリスクがあります。そのため、トリチウムの挙動を安全に制御し核融合装置内に閉じ込める技術、さらに、どこに、どれだけのトリチウムが存在するのか評価するための正確な計測技術が必要になります。

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私は、核融合システム中のトリチウムを制御するため、システムを形作る材料(タングステン等の高融点材料および特別に成分調整した鉄鋼材料や銅合金)の中にトリチウムが溶け込んだり透過したりする挙動を調べています。トリチウムの透過を抑制するための被膜形成に関する特許も取得しました。また、トリチウムの計測技術の開発にも取り組んでいます。私の所属する水素同位体科学研究センターの特色ある研究は国内外から高い評価を得ています。

その他には、トリチウムを安全に貯蔵する技術、核融合炉から排出される未燃焼のトリチウムを回収する技術、さらには、事故時におけるトリチウム放出を制御する技術などの開発も行っています。

燃料となる重水素は海中に無尽蔵

太陽光や風力などの自然エネルギーは燃料が枯渇する心配がない点では魅力的ですが、供給が安定しません。火力発電では地球温暖化が、原子力発電では使用済み核燃料の処分などが問題となります。

一方、核融合反応は人為的な制御が必要なため、事故により暴走したり勝手に臨界状態になったりする危険がありません。燃料となる重水素は海水中にほぼ無尽蔵に存在し、トリチウムは地中や海水中に存在するリチウムから作ることができるので、核融合は海洋国である日本にはうってつけのエネルギー源といえます。私たちは二酸化炭素を放出しない安定したエネルギー源として、核融合炉の実現を目指しています。

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上海応用物理学研究所の研究者の方をお招きして

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→電力会社・関連会社、電機・材料・化学メーカー、国公立研究所
  • ●主な職種は→製造、研究開発
分野はどう活かされる?

材料分析技術や放射線測定技術を生かした製造・研究開発業務に従事しています。

先生から、ひとこと

核融合研究は学際的学術分野で、国内および国際共同研究が盛んです。他の大学や研究所に滞在して実験をする機会も多くありますし、また、米国・EU・中国・韓国等で実験したり、これらの国・地域の研究者や学生と交流したりする機会にも恵まれています。幅広い経験をしたい方、国際的に活躍したい方にはぴったりです。

興味がわいたら~先生おすすめ本

カラー図解 プラズマエネルギーのすべて

プラズマ・核融合学会:編

核融合炉の全体像、開発要素、現状、課題などが、写真・図などのビジュアル資料と共に解説されています。記述もわかりやすいので、楽しみながら読んでもらえると思います。核融合炉や核融合実験装置は普段の生活の中で目にするものでもなく、また非常に大きな装置なので、最初は近寄り難いイメージがあるかも知れません。しかし、写真や図解が豊富なこの本で「核融合炉とはこのようなものか」という理解してもらえればうれしいです。 (日本実業出版社)


Newton2015年1月号 核融合への夢

月刊科学雑誌『Newton』の核融合特集。核融合発電の原理や特徴が大変わかりやすく、図解入りで示されています。核融合の基本から、最新の内容まで記述されています。バックナンバーを入手するか、図書館等にあれば、ぜひ手に取って見てください。 (ニュートンプレス)


新・核融合への挑戦

吉川庄一、狐崎晶雄

核融合について基礎から最新の研究まで網羅して紹介する教科書。難解な箇所もあるかと思いますが、初めての人にも理解可能な部分が多いので挑戦してみてください。何より、核融合発電の原理を体系的に学ぶことができます。 (ブルーバックス)


核融合炉工学概論

関昌弘

やや専門的な本ですが、高校生でも十分理解できる部分が多くあります。核融合について詳しく勉強したい人向けの書籍です。これまでの基礎研究から一歩進んだ、実用炉の実現に向けた技術開発について、より具体的な方法論が語られています。 (日刊工業新聞社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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