水俣病、イタイイタイ病という日本が経験した未曾有の公害を誘発したのは、それぞれメチル水銀とカドミウムでした。バングラデシュなどでは、井戸水にヒ素化合物が混入しており、住民の方々は慢性的にヒ素に曝露されています。このように環境中に放出され、生体に重大な影響を与え社会的な事件にまで発展した有害化学物質は、古今絶えません。これらの化学物質をしっかり検出し毒性を評価、生体への影響を科学的にきちっと証明し、治療や予防策を講じる必要があります。
慢性ヒ素中毒症状の発症メカニズムを明らかにする
私は、この放射線・化学物質影響科学という学問分野の中で分子毒性学を専門にしています。カンボジアやバングラディッシュなどの国で現地調査を行い、ヒ素による健康影響について調べています。これらの地域では、井戸水を介した慢性的なヒ素中毒による発がん、皮膚疾患、循環器疾患などが報告されていますが、それがなぜ起こるのか、分子レベルでのメカニズムについては明らかになっていません。それらの発症のメカニズムを明らかにすることを目的に調査・研究を続けています。ここが明らかになれば、慢性的なヒ素中毒による、様々な疾患に対する対応策を提示できると考えます。
一般的な傾向は?
- ●主な職種は→薬剤師
- ●業務の特徴は→薬剤業務
分野はどう活かされる?
未だ明らかになっていない現象を研究活動によって解明する過程を(苦しみながらも)経ることで、問題を提示し解決する能力を修得することができていると考えます。
私が所属する学部は薬学部で、研究室は衛生化学講座です。薬学における研究と言うと、有機化学を駆使した創薬、新しい薬理作用の探索などは想像しやすいかと思われます。衛生化学という領域はマイナー感が拭えませんが、「人の生命を衛る」ための非常に重要な学問領域であります。環境化学物質による生体への毒性発現機序を明らかにすることで、環境化学物質に曝されている多くの方々の生命を衛ることができればと考え、研究を推進しています。
薬剤師の資質として、薬や健康に関わる問題点を探索し、解決する能力が求められます。この能力は講義室で先生の話を聞くスタイルではなく、未だわかっていないことを実験で証明する「研究活動」によって習得することが可能です。徳島文理大学薬学部では、研究活動を行うための最新鋭の機器が準備されており、さらに世界で活躍されている先生の指導を受けることができます。これらの充実した環境により研究成果を学会などで発表し、高い評価を受けている在校生もいます。ぜひ、徳島文理大学薬学部で研究を一緒に行い、「問題を提示し、解決する能力」を養っていただけたらと思います。