水圏生産科学

プランクトンの共生

体内にプランクトンを飼い光合成してもらうプランクトン


高木悠花先生

東京大学 大気海洋研究所(農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻、新領域創成科学研究科 自然環境学専攻)

出会いの一冊

美しいプランクトンの世界 生命の起源と進化をめぐる

クリスティアン・サルデ、訳:吉田春美、粟津智子(河出書房新社)

とにかく美しい写真満載の大型本です。透明感のあるプランクトンの魅力がよく伝わってきます。眺めているだけでも楽しいですが、各生物についても詳しく解説されているので、科学的な知的欲求も満たしてくれますし、さらなる好奇心も掻き立ててくれます。

写真もいいですが、実際の試料を顕微鏡で観察した時はもっと美しいですよ。そう思う方はぜひこの世界に足を踏み入れてみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

体内にプランクトンを飼い光合成してもらうプランクトン

数百から数千もの共生藻

海はプランクトンだらけです。海に潜っても直接観察することが難しいので、あまり馴染みがないかもしれませんが、色とりどり、形も大きさも多種多様な生物の世界が広がっています。

私の研究では、プランクトンどうしの共生、特に光合成する微細藻類を細胞内に共生させている「光共生」という現象を扱っています。中でも私は、浮遊性有孔虫という顕微鏡サイズの小さな単細胞動物プランクトンに着眼しています。石灰質の殻を作るプランクトンで、化石になる生物としても知られています。この有孔虫、宿主も単細胞なのですが、その中に数百から数千もの共生藻を飼っているのです。

謎の多い「光共生」

細胞内に他の生物を共生させ、一体何をしているのでしょうか?一般的に光共生関係では、共生藻は宿主に光合成でつくった糖やアミノ酸などを渡し、宿主は共生藻に二酸化炭素やアンモニアなどの代謝産物を渡していると言われていますが、未だ不明点が多くあります。実験室で維持することが難しい生物なので、プランクトンの光共生については、実はほんの一握りのことしかわかっていません。

逆に言えば、研究すればするほど新しいことがわかってくる面白い対象でもあります。私の研究では、天然環境から浮遊性有孔虫を採取してきて飼育・観察・実験したり、共生藻の光合成や遺伝子発現を調べてみたり、はたまた地球温暖化によって光共生関係がどうなるかなど、様々な手法や視点からアプローチしています。

共生関係から生命進化へ

細胞内共生は、進化の原動力のひとつでもあります。浮遊性有孔虫は化石に残るという特徴から、進化の研究にもうってつけです。小さなプランクトンの共生関係から、生命進化の大きな秘密に迫ろうと取り組んでいます。

浮遊性有孔虫のさまざまな種。炭酸カルシウムの殻に細胞質が入っており、多様な色は共生藻の色とも関係しています。
浮遊性有孔虫のさまざまな種。炭酸カルシウムの殻に細胞質が入っており、多様な色は共生藻の色とも関係しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

学生時代は地球科学を学び、古生物学・古環境科学の研究室に所属して化石の浮遊性有孔虫の研究をしていました。古生物の生態を研究する面白さを感じつつも、今生きているものももっと理解したいという思いが強まり、段々と現生試料を扱うようになって現在に至ります。

「光共生」というテーマに出会ったのは、1本の論文がきっかけ。修士課程在籍中に、その論文の著者と同じ研究航海で2ヶ月間過ごせたことも、とても刺激となり、研究者を志す転機となりました。

調査で用いる研究船。海をフィールドにした研究では、観測航海に参加する機会が多くあります。写真は大西洋の航海で乗船したドイツ船METEOR。世界中の海に赴き各国の研究者と共同研究できるのも醍醐味のひとつです。
調査で用いる研究船。海をフィールドにした研究では、観測航海に参加する機会が多くあります。写真は大西洋の航海で乗船したドイツ船METEOR。世界中の海に赴き各国の研究者と共同研究できるのも醍醐味のひとつです。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「海の砂漠で光合成を担う「光共生」の関連遺伝子特定」

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渦鞭毛藻を共生させる浮遊性有孔虫。共生藻は宿主の仮足(細胞の一部)に包まれており、有孔虫の殻の外に存在していても、細胞内共生の状態にあります。
渦鞭毛藻を共生させる浮遊性有孔虫。共生藻は宿主の仮足(細胞の一部)に包まれており、有孔虫の殻の外に存在していても、細胞内共生の状態にあります。
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中高生におすすめ

カラー図解 進化の教科書

カール・ジンマー、ダグラス・J・エムレン、訳:更科功、石川牧子、国友良樹(講談社ブルーバックス)

進化をいろんな側面から学べます。私は高校でも大学でも生物を学んでこなかったのですが、この本で網羅的かつ体系的に理解できます。歴史的な話から、最新の研究の話題まで、専門的なことも噛み砕いて説明してくれていますし、図も多く大変読みやすいので高校生にもオススメです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

生態学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ドイツ。短期滞在したことがあり、暮らしやすさを感じたので。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

ライフ・イズ・ビューティフル

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

観葉植物を育てる


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