体内にプランクトンを飼い光合成してもらうプランクトン
数百から数千もの共生藻
海はプランクトンだらけです。海に潜っても直接観察することが難しいので、あまり馴染みがないかもしれませんが、色とりどり、形も大きさも多種多様な生物の世界が広がっています。
私の研究では、プランクトンどうしの共生、特に光合成する微細藻類を細胞内に共生させている「光共生」という現象を扱っています。中でも私は、浮遊性有孔虫という顕微鏡サイズの小さな単細胞動物プランクトンに着眼しています。石灰質の殻を作るプランクトンで、化石になる生物としても知られています。この有孔虫、宿主も単細胞なのですが、その中に数百から数千もの共生藻を飼っているのです。
謎の多い「光共生」
細胞内に他の生物を共生させ、一体何をしているのでしょうか?一般的に光共生関係では、共生藻は宿主に光合成でつくった糖やアミノ酸などを渡し、宿主は共生藻に二酸化炭素やアンモニアなどの代謝産物を渡していると言われていますが、未だ不明点が多くあります。実験室で維持することが難しい生物なので、プランクトンの光共生については、実はほんの一握りのことしかわかっていません。
逆に言えば、研究すればするほど新しいことがわかってくる面白い対象でもあります。私の研究では、天然環境から浮遊性有孔虫を採取してきて飼育・観察・実験したり、共生藻の光合成や遺伝子発現を調べてみたり、はたまた地球温暖化によって光共生関係がどうなるかなど、様々な手法や視点からアプローチしています。
共生関係から生命進化へ
細胞内共生は、進化の原動力のひとつでもあります。浮遊性有孔虫は化石に残るという特徴から、進化の研究にもうってつけです。小さなプランクトンの共生関係から、生命進化の大きな秘密に迫ろうと取り組んでいます。
学生時代は地球科学を学び、古生物学・古環境科学の研究室に所属して化石の浮遊性有孔虫の研究をしていました。古生物の生態を研究する面白さを感じつつも、今生きているものももっと理解したいという思いが強まり、段々と現生試料を扱うようになって現在に至ります。
「光共生」というテーマに出会ったのは、1本の論文がきっかけ。修士課程在籍中に、その論文の著者と同じ研究航海で2ヶ月間過ごせたことも、とても刺激となり、研究者を志す転機となりました。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 生態学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ドイツ。短期滞在したことがあり、暮らしやすさを感じたので。 |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? ライフ・イズ・ビューティフル |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 観葉植物を育てる |