知覚情報処理

撮影技術

通常見ることが不可能な、高速で動くスポーツ中継をとらえる!ダイナミックイメージコントロール技術を開発     


奥寛雅先生

群馬大学 情報学部 情報学科(理工学府 理工学専攻)

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カメラのアングルを高速に制御するために開発した機材


◆どのような研究ですか

卓球のテレビ中継を見ていると、ラリー中の球をカメラがとらえきれないという場面を目にすることがあります。どんなに高速で撮影できるカメラができても、それを使うのは人間です。

優れたカメラマンでも、高速で動く球を、最も良いカメラアングルで追い続けることは不可能です。私は、通常では見ることができない高速で動く対象や現象を、人間にとって分かりやすい形で提示する技術を開発しました。

この技術を「ダイナミックイメージコントロール」と言います。知覚情報処理分野の画像処理研究で、より視聴者に分かりやすい、迫力のあるスポーツ中継映像の撮影が可能になると期待されています。

◆どんな成果が上がりましたか

高速回転する卓球のラリーから顕微鏡下の生物の動きまで、正確に画像化ができます。

新しい技術の秘密は、高速で動く卓球を瞬時にとらえる画像処理技術と、その高速な動きに合わせて、カメラの撮影する方向を迅速に制御できる、新開発の仕組みにあります。

この仕組みは、カメラの前に高速に角度を変更できる小型の鏡を配置した物で、鏡の角度が変わると、カメラから見える方向が変わります。それによって、カメラを動かさなくても、例えば高速回転する球の動きまでも、正確にとらえ続けることができるのです。

◆その研究が進むと何が良いのでしょう

この技術の応用範囲は、新しい映像表現が求められる映像・メディア分野だけではありません。画像計測に技術的な困難が多い医療・バイオから、顕微鏡下での生物の動きまで、幅広い分野で映像利用の新たな展開が期待され、次世代の画像メディアテクノロジーの創出を目指しています。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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今回、映像の撮影に関する点を中心に紹介しました。この技術は映像を利用する各種メディア技術の基盤になるだけでなく、工場の自動化などにも貢献する技術になっています。

また私の研究室では、映像の投影を利用したヒューマンインターフェイスに関する研究も行っています。特に、遠隔地とのコミュニケーションにも応用できることから、リモートワークの効率化・高機能化を通じて、人間中心の働き方の実現に、貢献できると考えています。

この道に進んだきっかけ

高校の時に物理学が好きで、大学では物理学を専攻していました。しかし、大学の物理学は高度な数学を基礎としていて、扱う内容も抽象的になります。勉強するうちに、自分には数学の能力があまりないことがわかりました。

そして抽象的な物理学よりも、ロボットのように眼の前で見えて動くモノの方が、面白そうだなと感じるようになりました。そこで大学院に進学する際に、思い切って工学に専門を切り替え、ロボットや画像処理を研究している研究室に所属しました。結果的にこの選択は大当たりで、研究が面白くなって夢中になってやっているうちに、研究を生業にするようになりました。

皆さんも自分の進路を決める場面が、これから何度かあると思います。自身の成長や環境変化によって、最初の方針が自分と合わなくなることもあるでしょう。そんな時は進路変更も選択肢に入れて、柔軟に考えみてください。

どこで学べる?
もっと先生の研究・研究室を見てみよう

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料理にプロジェクションマッピングをしている様子。ここではパンケーキにキャラクターを投影しています。

学生はどんな研究を?

高速画像処理技術と、高速な可変光学デバイス・ユニット技術を基盤として、動的な映像制御や、新たな画像利用計測手法などを研究しており、次世代メディアテクノロジーの創出を目指しています。

具体的には、動的な対象へのプロジェクションマッピングや、それを利用した新たなスポーツの演出手法、画像計測が重要な医療・バイオ・顕微鏡分野における計測手法、人間に理解しやすい映像が求められるFA・ヒューマンインタフェース・バーチャルリアリティ分野での新たな映像利用や提示手法、変わったところでは料理への映像投影による、新たな食の演出方法等の研究を行っています。

学生はどんなところに就職?

◆主な業種

・自動車・機器

・電気機械・機器(重電系は除く)

・精密機械・機器(医療機器を除く)

・ソフトウェア・情報システム開発

◆主な職種

・設計・開発

・製造・施工

・生産管理・施工管理

・システムエンジニア

◆学んだことはどう生きる? 

研究を通して身につく画像処理、組み込み系、光学系、プログラミングの知識はそのまま、就職先のメーカーやシステムエンジニアの業務で活かされています。

先生からひとこと

この分野には、全体的にこれまでの学問の垣根を取り払い、多様な技術を融合させて新しいものを生み出そうとする気概にあふれているので、ぜひ皆さんも既存の概念にとらわれず、新しいものに挑戦してほしいと思います。

先生の研究に挑戦しよう!

・市販のマイコン(Arduino)にLEDをつなげて、ディスプレイを作ってみよう. 

・虫眼鏡のレンズなどを型にして寒天を固めて、食べられるレンズを作ってみよう.

中高生におすすめ

三体

劉 慈欣(早川書房)

基本的に人間社会と異星文明との接触を描いたSF作品です.非常に壮大な内容を魅力的なキャラクターが織りなす物語として巧みに描いており、読み始めると止まらなくなります。SFらしく先端的な物理学やナノテクノロジー、情報技術に基づく内容も多く、理系の人間にはたまらない内容となっているので、興味がある人はぜひ一度読んでみてください。


モモ

ミヒャエル・エンデ(岩波少年文庫)

灰色の男たちによって人々から「時間」が盗まれていく。時間が盗まれることによって、人々の心からは優しさや思いやりが消えつつあった。そんな中、不思議な力を持つ少女・モモによって、人々は少しずつ本来のありかたを取り戻す――。人生の有限の「時間」をどう過ごすべきか、考えさせてくれる作品です。これからどのように生きていくのかを考えるきっかけにしてください。


坂の上の雲

司馬遼太郎(文春文庫)

伊予松山で生まれ、後に軍人として名を刻む秋山兄弟と、短歌・俳句の革命に命をかけた正岡子規。彼らを中心に、明治維新から日露戦争という近代日本の黎明期を描いた長編小説です。学問で天下を目指す3人の青春時代を描いた序盤からは、明治維新を経た新興国家である日本の若い息遣いが感じられます。現在の日本を理解するための教養の一つとして、一読をすすめます。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

特定のアーティストではないのですが、Lo-Fi HipHopや、Chillhopと呼ばれるジャンルの音楽を、作業用に聴いています。聞きながら作業すると、ゾーンに入りやすく集中力が長続きするように感じるので、勉強する時の音楽にお勧めです。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

20年以上前の映画ですが『マトリックス』ですね。詳しく語るとネタバレになるのでやめておきますが、VR/ARやインターフェイスに興味があれば、ぜひ一度見てみてください。続編もありますが、まずは初期作を見ることをお勧めしておきます。

Q3.熱中したゲームは?

ゲームは好きで、小学校の頃から遊んできました。最近では、「デス・ストランディング」「Fall Guys」が印象的ですね。私の研究アイディアの多くは、ゲームの内容がヒントになっています。最近は遊ぶ時間があまり取れないので、困っています。


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