細胞スケールでは水はハチミツ状に。その流れを方程式で解く
生物の体内外にも存在する「流れ」
水や空気の流れを調べる学問を「流体力学」といいます。蛇口から出てくる水などの身近な流れも、台風や雲、海洋や河川などの壮大な流れも、流体力学の研究対象です。
また、私たち自身に目を向けると、体を動かした時の周囲の空気の流れや体内の血液の流れのように、生物の体内外にも様々な流れが存在することがわかります。このような生き物の内外の流れを研究する分野が「生物流体力学」です。
私は、生物の中でも顕微鏡でしか見えない細胞スケールの流れを「数学」を使って研究しています。
ミクロ世界では粘性が大
ミクロの世界では、周囲の水がねばねばに感じられることを知っていますか。仮に私たちが細胞スケールまで小さくなった時には、普通の水の中を泳いでいても「ハチミツの中を泳いでいる」ようになってしまうのです。これは、ミクロの世界で「粘性」の効果が大きくなる現象として知られています。
流れを解けば、かたちがわかる
残念ながらこれを実際に体験することはできませんが、流体力学の方程式を使うことで理解することができます。この方程式は生物の「かたち」と密接に関わっているため、生物の周りの流れの式を手計算で解いたり、あるいはコンピュータシミュレーションをしたりすることで、生き物の泳ぎ方や形の情報を取り出すことが可能なのです。
このように流れを通した「かたち」と「数学」を合わせることで、目に見えない生き物の世界を覗いたり、実験の難しい生体内の現象に理論的なアプローチをすることができます。
→先生のフィールド[数理構造活用]ではこんな研究テーマも動いている!◆テーマとこう出会った
大学入学当初は、理学部で化学や物理を学んでいました。生物流体力学の研究に取り組み始めたのは、大学院で流体力学の理論研究を行う研究室に入って、自分の研究テーマを探すため様々な論文を読んでいた頃です。研究室の先生に突然「生物に興味はないか」と声をかけられたのがきっかけでした。
高校で生物を選択しておらず、あまり知識はありませんでしたが、生き物の飛翔や遊泳など流体中のしなやかな運動に素朴な興味を抱きました。実は、その先生も研究室の他のメンバーも生物を扱ったことがなく、完全に手探り状態でしたが、「自分が面白いと思うことをすれば良い」と気づけたことで世界が一気に広がりました。
◆中学時代
ちょうどインターネットが一般家庭に普及してきた時代です。チャットサイト(今でいうSNS)で知り合った海外の同世代の人たちとのメールのやりとりにハマっていた時がありました。今でも海外の共同研究者とメールやビデオ通話でのやり取りを楽しんでいるわけで、この点は当時とあまり変わらないのかもしれません。
◆ミクロの世界での泳ぎ方 数理の目で見る精子の旅(academist Journal)
◆閃きの瞬間(京都大学 白眉センターHP)
◆数学の力で生命現象を理解する 21世紀の自然哲学者(東京大学HP)
流体力学は数学と共に発展してきた長い歴史があります。京都大学数理解析研究所は、数学・数理科学(純粋および応用数学、コンピュータ・サイエンス、数理物理)研究の中心拠点の一つとして、これまで多くの研究者を輩出してきました。ここでは世界中から研究者が集まり、流体力学を含めた最先端の数学・数理科学の研究が行われています。学生は大学院生しか所属しておらず、少数精鋭できめ細かな教育が行われています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 数学。今ならもっとわかる気がします。 |
|
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス。研究留学で2年間滞在しましたが、まだ行っていないところがたくさんあります。 |
|
Q3.一番聴いている音楽アーティストは? スピッツ。中学生の頃から聞いています。 |
|
Q4.大学時代の部活・サークルは? 国際交流系のサークルに入っていました。 |
|
Q5.会ってみたい有名人は? レオナルド・ダ・ヴィンチ |