実際のトンネル実験で、火災時の人の動きや感情を明らかに
犠牲者を減らす技術に貢献
壁や天井がある建築空間よりも大きな空間を対象に火災が発生した際の煙の挙動や、煙の中を避難者がどう動くのかについて、実際の実験による軌跡や感情から調べています。この点を明らかにすることで、次の行動予測や犠牲者を減らす技術への貢献を目指しています。
インフラの発展と防災の必要性
日本は島国ですが、山間部が75%を占めています。皆さんの生活を支えるために道路網が整備されてきましたが、結果として日本は1万本以上の道路トンネル、5千本近くの鉄道トンネルを所有することとなりました。私はこのトンネル空間を対象に、実際のトンネルを用いた実験で避難者の挙動を調べています。
トンネル空間で火災が発生すると煙の逃げ場がなく、煙が避難空間に充満した状態になります。煙が充満した状態では普通に歩行することが困難になります。これは、煙によって視界不良になることと、煙の吸い込み、煙という未知な経験による感情の不安定といったことが挙げられます。
一方で、1万本あるトンネル全てに排煙や避難口といった非常用設備(ハード対策)を設置することは財政的に困難です。そこで、避難者側へ直接アプローチするような効率的なソフト対策を提案するために、現在の研究を行っています。
安全は神話ではなく、皆で協力して作り上げるもの
よく「安全神話」という言葉を耳にすることがあると思います。しかし、安全は維持管理側、メーカーだけでなく、利用側のモラルや行動によって形成されます。安全は、私たち含め皆で作り上げるもので、各々の知恵や経験、科学技術が必要となります。
対象を拡大、目指せ!宇宙ステーション火災防災
最近では地下空間(地下街や地下鉄駅)を対象にし、将来的には大深度地下空間近未来都市や宇宙ステーション火災時の避難について拡張していく予定です。
過程も大切、挑戦や変化、大いに楽しんで!
最後にひとこと。皆さんには、コスパやタイパだけでなく、その結果に至るまでの過程も大切にしてほしいです。無駄だと思えることも、結果として必要だったということがたくさんあります。可能性は無限大だからこそ、悩むことも多いと思います。是非大いに悩んでください。挑戦や変化、大いに楽しんでください。
◆数学好きから◆
私は元々、数学が好きで、数学を使える学科という点で工学部、潰しがききそうな機械系を選びました。
◆アルバイトから見た社会問題◆
大学入学後、アルバイトでコンビニで働いていたとき、ゴミの分別をしながら、環境問題に興味を持ちました。卒業研究時、環境問題に活用できそうだなと流体力学研究室(雲の動き等、流体)を選びました。入った研究室で火災防災の研究に従事するうちに、わからない点を追求していったら、結果として、土木工学に所属することとなり、今に至ります。
◆主な業種
(1) 交通・運輸・輸送
(2) 自動車・機器
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 技術系企画・調査、コンサルタント
◆学んだことはどう生きる?
卒業後はゼネコン、コンサルタント、メーカーに就職したり、大学院の博士前期課程、さらに博士後期課程に進む学生もいます。
◆環境問題は火災防災、土木と機械は関係ない?
工学部第四類 は、建設・環境系の学科です。環境問題が火災防災と関係ないかと言われると、そうではありません。地球が温かくなれば、機械の故障率も変わりますし、高温状態で火は消しにくく、これまで以上に余分な水や消火剤が必要になります。これらの環境負荷を考えると、環境問題と火災防災はつながっているのだと痛感します。
土木と機械の関係も深いです。私が今研究していることは防災計画学であり、そのベースには基礎科目である流体が含まれます。我々の大学の強みは、融合分野としてフレキシブルに対応できる点にあると思います。
(1)なぜ避難訓練をするのか、内容と改善点を調べてみましょう。
(2)なぜ人は避難しないのか、問題点を考えてみましょう。
(3)安全と防災について考えてみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 数学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? スウェーデン、北欧全般「安全」に関する考えが先進的なので、学びたい |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? Taylor Swiftの『Cruel Summer』 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 推理小説を読むこと |