素粒子集団とは違う振る舞いをする「準粒子」の特性を追う
物質の性質は素粒子集団の性質
全ての物質は、素粒子と呼ばれるクオーク、電子やニュートリノからできていることが知られています。身の回りのものは、これらがアボガドロ数個(10の23乗個)というとてつもない数だけ集まってできています。
色や硬さだけでなく、電気を流す、磁石になる(磁性を持つ)などの性質は、素粒子の持つ個別の性質というよりは、むしろ素粒子が集団を作っていることに由来しています。
その集団としての性質は、時に電子などの構成要素だけからは予想もつかない性質を表します。私は、それを理論的に側面から研究をしています。
活性化すると異なる性質を持つ「準粒子」
物質にエネルギーを与えると、集団の中の粒子の一部(例えば電子)が活性化されます。その活性化されたものは粒子のように振る舞いますが(準粒子と呼ばれます)、とても面白い点は、周りの粒子から影響を受けるため、もとの素粒子とは全く異なる性質を持つ場合があるということです。物質をうまく選ぶ、または合成することで、素粒子には持ち得ない性質を準粒子に付与できる場合があるのです。
準粒子の合成で安定した量子コンピュータも
そのような特殊な準粒子ができれば、周りから影響を受けづらい、安定した量子コンピュータが実現することも指摘されています。私の研究では、その準粒子が実現する舞台として磁性体に注目し、準粒子の性質を明らかにすることや、それを生成したり物質中を移動させる方法の理論提案を行うことを目的にしています。
→先生のフィールド[トポロジー]令和元年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!◆テーマとこう出会った
研究テーマは、ポスドク(博士研究員)と助教の時に行っていた研究を発展させたものです。このときに始めた磁性体の研究は、数学的に「解ける」模型を中心としていたため、その磁性体の模型の性質はすべてわかっていると思われていて、取り組んでいた当初は、あまり注目されませんでした。
しかし、実際わかっていたのは絶対零度の性質のみだったので、周りの方々と共同で、実験と比較ができる物理量の温度変化を計算したのが、研究のきっかけです。一方で、学生の時に所属していた研究グループでは、物質の性質が刻々と時間変化する非平衡系と呼ばれる研究も行っていました。本研究テーマは、そのときの経験も強く影響しています。
◆高校時代は
泊まりがけで参加した筑波大学の体験授業が思い出深いです。実家からは遠く、一人で参加するのは寂しかったですが、とても面白かった記憶があり、今後の進路決定に大きく影響しました。このようなオープンキャンパスを超えた中高生向けの大学の活動は、大学に勤めてみると、現在の日々の教員の業務量からみてとても大変なことだと実感しています。一方で、最先端の研究を行っている大学教員と一定期間、直接触れ合える機会があることは、科学を志す中高生にとって重要なことだと思います。
◆出身高校は?
山形県立長井高校
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「15.エレクトロニクス・ナノ」の「60.物性物理・量子物理、半導体、電子関連材料」
数物・電子情報系学科は、数学、物理および電子情報系からなる学科です。物理と関係が深い数学や情報系も、同時に学ぶことができるのが特徴です。
また、学科の中にある物理工学教育プログラムは、物理工学という名前ではありますが、物性物理や量子情報だけでなく、素粒子物理や宇宙物理の研究グループもあり、物理を学びたい学生にとって、幅広い分野を学ぶことができます。
2019年には理工学部の近くに新駅ができ、2022年度に新横浜駅と一駅で結ばれる予定です。これまでに比べ、大学への通いやすさという面でも魅力が増すでしょう。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 生物学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 雪が降らなくて、夏暑くないところ。 |
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Q3.熱中したゲームは? 『マリオカート』 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 子育て |