空気の発見
三宅泰雄(角川ソフィア文庫)
空気の発見を最初の題材に使って、科学の発展してきた歴史とそれを取り巻く科学者の思想や生活まで、わかりやすく記述されています。やや子供向きかもしれませんが、高校生でも十分面白く感じられる本です。
空気も細かく見れば原子の組み合わせでできている物質であり、材料の一種と言うことができます。材料の様々な性質を研究している私にとっても、材料研究の歴史を見直せる点で興味深く感じます。
誰も挑戦したことがない実験、誰も考えたことがない論理には、誰もが知らない新しい材料の性質が隠れています。後の時代に当たり前のように感じられる研究結果こそが最も重要な発見となるので、私もそういう発見をしたいと思っています。
電子の振る舞いで材料の強さは変わるのか。材料の機能を開拓
鉄器時代の次は半導体時代
人類の文明は新しい材料の利用とともに発展してきました。古くは石器時代や青銅器時代、そして最近まで、「鉄は国家なり」と言われる鉄器時代が続いていました。そして、歴史的に見れば最近急速に普及したのが半導体です。
鉄器時代まで、材料は強くて軽い性質が求められてきました。それに対して、半導体は全く別のベクトルを持ちます。それは、「強さ」ではなく「電子の振る舞い」を利用する点です。
その結果、コンピュータ、LED、各種センサーなどが実現されました。例えば、CPUで有名な米国I社・A社やネットサービスで有名な米国G社・A社などは、半導体材料を人類が利用することで成立したのです。現代の人類はまさに文明の歴史的転換点にいると言えます。
光が半導体の性質を激変
そうした中で、私は半導体の「強さ」と「電子の振る舞い」の相互作用を調査し、従来にない新材料やその利用法を生み出す研究を行っています。
これまで、例えば、機械工学なら「強さ」、電気工学なら「電子の振る舞い」、というように学術分野間に垣根がありました。ところが、ここ10年ほどのナノテクノロジーの発展で、このような分野間の垣根が消滅しつつあります。
私の研究では、分野間の垣根を超えてこれまで知られていなかった現象を調査しています。例えば、最近、環境光が半導体の加工性を激変させることを発見しました。このような誰にでもわかりそうな現象が今も隠れています。それらを紐解く楽しさが研究を続けるモチベーションです。
→先生のフィールド[ナノ力学] 令和元年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!元素の種類は118個と有限で、それらを組み合わせた化合物の安定構造もほぼ明らかとなっています。そのため、物質・材料研究分野は発展の余地が乏しいとしばしば言われています。
しかし、私の研究にあるように、光や電子などの物質中の原子よりさらに細かい内部環境をコントロールすることで、物質・材料の性質は激変します。この観点の研究はまだ分野間の垣根にあるため、十分進んでいません。私は、分野間の垣根を越えて、従来にない新しい物質・材料の開発やその利用法の開拓に挑戦しています。
◆テーマとこう出会った
地学と生物が好きでしたが、高校では専門の教員が不在で地学を選択できず、なぜか生物の授業には面白さを感じず、結果的に物理と化学を選択しました。その流れで、大学では機械工学と材料学を学びました。そこで、原子スケールで見ると材料が生きていることがわかり、生物的な面白さを感じるようになりました。
最近は、ナノテクノロジーの発展により、原子より小さい「電子の振る舞い」こそが材料の性質を支配することがわかってきました。私の研究テーマは、高校で学ぶ「光電効果」にも近い現象です。光環境が電子の振る舞いに、さらには物質の機械的性質に与える影響に焦点を当てています。この研究は世界的にも手探りの状態ですが、自分の研究発表が科学の方向性まで決めていくことにやりがいを感じています。
◆高校・大学時代は
一眼レフカメラを使った写真撮影を趣味にしていました。対象は星空であったり、昆虫であったりと様々です。一眼レフカメラは、光とレンズを利用して結像するという点で、現在私が研究で利用する電子顕微鏡と原理的に類似しています。実験装置を使いこなす上では原理を理解することが重要ですので、カメラを使った写真撮影の経験が今も電子顕微鏡観察に生きています。
◆出身高校は?
兵庫県立姫路西高校
「無機材料・物性」が 学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)
「16.材料」の「63.鉄・アルミ・チタン・マグネシウム・セラミックス等」
幾原雄一
東京大学 工学部 マテリアル工学科/工学研究科 総合研究機構
【最先端電子顕微鏡を用いた粒界・界面構造の研究】学生時代の先生で、心の強さの重要性を教えてもらいました。
竹内伸
東京大学名誉教授/元東京理科大学学長
【結晶の塑性変形】85歳ながら研究に興味を持ち続けて活動しています。自分もそうなりたいと思います。
名古屋大学工学部物理工学科は、物性物理学にかなり重点を置いたカリキュラムです。応用物理学会・物理学会・金属学会などが関係しています。工学部でありながら、かなり基礎的な研究を行っているのが特色です。この点で、例を挙げれば東京大学工学部物理工学科とは類似しており、その一方で機械工学や航空工学を含む京都大学工学部物理工学科とはかなり性格が異なります。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? Maroon 5。特に『Sugar』。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『ジュラシック・パーク』 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 野生生物研究会 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? Webサイト構築 |
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Q5.研究以外で楽しいことは? 生き物の飼育 |