賢くはたらく超分子 シャボン玉から未来のナノマシンまで
有賀克彦(岩波科学ライブラリー)
皆さんがイメージしやすい化合物は、高分子化合物や有機化合物だと思います。一方、私が専門とする分野は超分子化学といって、高分子化合物や有機化合物とは異なります。超分子化合物は、分子と分子の間に比較的弱い力が働き、分子同士がゆるやかに結びつき、集合体を作ります。この現象は、皆さんの身近にある食品や生活品にも利用されています。
この本には、超分子化学が誕生したきっかけとなった王冠状の分子(クラウンエーテル)から、食品や飲料に使用されている環状オリゴ糖のシクロデキストリン、界面活性剤が形成するミセルやシャボン玉、超分子の様々な機能などが、わかりやすく紹介されています。超分子とはどのような分子なのか知りたい高校生には、必ず読んでほしい本です。
レアメタル・白金族金属を効果的に回収できる有機化合物の開発
希少金属のリサイクルは世界的な課題
貴金属に分類される白金族金属(パラジウム(Pd)や白金(Pt)、ロジウム(Rh)など。以降、PGM)は、私たちの身近にあるものに使用されています。
代表的な例として、ガソリン自動車に搭載されている排気ガスを浄化する触媒(自動車排ガス触媒)があります。
自動車排ガス触媒には、現在、PdやPt、Rhの三種類のPGMが使用されています。しかし、これら金属はとても高価であり、地球上の存在量が少ないといった問題があり、世界でリサイクルする取り組みが行われています。
しかし、ここで使用されるPGMを分離するための材料には、安定性や分離性能、選択性など解決すべき課題があります。
PGMを効果的に分離できる抽出剤の開発
私たちは、上記課題を克服できるPGMを効果的に分離できる抽出剤の開発に取り組んでいます。その一つが「ピンサー型抽出剤」と呼ばれる有機化合物の開発です。
ピンサーは「カニばさみ」という意味で、ピンサー型抽出剤中の3つの元素で、あたかも「カニが餌を食べる」ように、金属を捕らえる興味深い化合物です。
スマホなどからのリサイクルも期待
この抽出剤は、使用済みの自動車排ガス触媒を溶解させた酸性溶液から見事にPdを効果的に分離できるということがわかりました。「PGMを分離するピンサー型抽出剤」に関する研究を行ったのは、私たちが世界で初めてです。
将来的には、自動車排ガス触媒以外にもスマートフォンなどPGMを含むものからの分離にもピンサー型抽出剤が利用できると期待しています。
「ピンサー機能を附与したジフェノールを鍵とする高選択的パラジウム抽出剤の革新的開発」
◆主な業種
鉱業・資源
◆主な職種
(1)基礎・応用研究・先行開発
(2)生産技術(プラント系)
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 化学 |
|
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ |
|
Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『ターミナル』 |
|
Q4.研究以外で楽しいことは? 海釣り |